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ある夜、里の家々から現れ、足音も幽かに何処かへと歩き出す黒い影。 影は少しずつ増え、あるいは、家なき影もいる――つまり、虐待お兄さんと呼ばれる彼らと 同じ気質を持つ幽霊や妖怪達だ。 時に非常識とも思える行動を取る”お兄さん”は、実は人間ではないことが多い。 または、その趣味に身を焦がすあまり人を超えてしまうということもある。 どちらにしても変わらない。彼らの行為そのものが代名詞なのだから…… 彼らすべてをひっくるめて、人は呼ぶ。『虐待お兄さん』と。 彼らはお互いを夜闇の中で確認し頷きあう。 そして、里のはずれにある巨大な地下室へと向かって静かに歩を進める。 ライブ やがて全ての人々を収容したコンサートホールはむっとする熱気に包まれる。 人々の注視の先にあるステージにはギター、ドラムセットその他の楽器、音響設備があり、 そして目の粗い金網が張られている。 誰も何も言わない。 立ち起こる水を打ったような静寂。咳払いすらも起こらない真空状態。 その緊張を破るように、人影が金網の向こうに現れる。 数人からなる楽士隊と、一匹のれみりゃ――このコンサートの歌姫――だ。 れみりゃの手にはマイクが握られている。出所は不明だが(それを言うなら、この施設の存在そのものが胡散臭い)、 きちんと機能するしろものだ。 沈黙を切り裂いて、マイクのガチャガチャ音。続いてれみりゃの吐息が増幅されたボエーという響き。 そして第一声が発せられる。 「うっう〜♪おにーざんたぢぃ〜♪きょうはれみりゃのこんさーとにきてくれてありがどうだっどぉ〜!」 その瞬間、ホールが動鳴する。 「うおお〜〜!!」 「おぜうさまーー!!」 「れみ☆りゃ☆うーーーーー!!」 人々が足を踏み鳴らしはじめる。 最初こそばらけているその振動は、たちまちのうちに収斂し、たった一つのリズムとなってホールを揺るがす。 「「「セイ!セイ!セイ!セイ!」」」 そのリズムは、歌え歌えとせきたてる。 踊れ踊れと囃したてる。 「うーみんなまちきれないんだっどぉ〜?しょうがないどぉ☆ それじゃあさっそくぅ、いっくどぉ〜☆」 れみりゃがやわらかい腕を振り上げた。 シンバルのワン・ツーから走り出すドラムに待ちかねたようにかぶさるギターと、音の奔流を支えるベースギター。 その調和の只中に、 「おっぜうさまはぁ〜、とってもえっらいんだっどぉ〜。 こーまかんのぉおぜうさっまなんだどぉ〜♪うー♪」 重石を投げ入れるような歌声。しかし音楽は巧妙に歌声をかいくぐり進行を維持してゆく。 人々は二拍子を刻む一つの機械となり、握り拳を繰り返し高い天井へと差し上げる。 「ぷっでぃんおいちいどぉ〜♪あまあまだいすきだ・っ・ど・ぉ〜♪」 れみりゃの振り付けにあわせてPPPHも抜かりなく。 「こうまかんのおぜうさま〜、れみりゃおぜうさま〜♪うー!」 「みんなありがとうだっどぉ〜♪つぎのきょくはぁ、おぜうさまのこーまかんのおうたなんだどぉ〜☆」 再び大歓声。 「おうえんよろしくだっどぉ〜♪うー♪いぇい♪」 ヒューヒュ−と口笛も飛ぶ。 「おっぜうさまはぁ〜、とってもえっらいんだっどぉ〜……」 前の曲と歌詞は同じである。だがそんなことは些細なことだ。 人々はドラムに灼かれ、ギターのリフに全身を切り裂かれ、ベースの潮流にその身を委ねた―― 「みんなぁ☆おぜうさまのなまえをいってみるんだどぉ?」 「「「れみりゃおぜうさまーーーーー!!!」」」 「んー?きこえないどぉ?」 「「「れ・み・り・ゃ・おぜうさまーーー!!!!!!」」」 「そうだどぉーー!とってもえれがんとでぇ、とってもぷりちーな、 か☆り☆す☆ま☆おぜうさまだっどぉ〜♪うっうー!」 「「「うっうーーーーー!!!」」」 数時間の熱狂の後、無事にコンサートは終了した。 「「「れ・み・りゃ!れ・み・りゃ!」」」 「「「れ・み・りゃ!れ・み・りゃ!」」」 大喝采の中を手を振りながら退場してゆくれみりゃ。お辞儀をし、一人ずつ去ってゆく楽隊。 眩しい照明と音響のハウリングが止み、一繋がりだった聴衆たちはその熱を心に宿したまま個人へと立ち戻る。 雑談するものもあれば、独りでコンサートの余韻を噛み締めるものもいる。 人々は疲れ果て、しかしその表情は明るくホールを退場してゆく。 * * * * 男は家路を急ぐ。 体は鉛のように重いが、足だけはひとりでに前へと進んでいく。 つい先ほどのライブを思い返している。 辺り中から降る音。尻を振るれみりゃ。体を貫く振動。 手を胸の前に持ち上げぶりっこのポーズのれみりゃ。 れみりゃの声音。へたくそなダンス。にこやかな表情。 「れみりゃ……れみりゃ……れみりゃ……」 足取りが軽くなる。 ざっ。ざっ。ざっ。 れみりゃ。れみりゃ。れみりゃ。 ざっざっざっ れみりゃれみりゃれみりゃれみりゃれみりゃれみりゃれみりゃれみりゃれみりゃ 「うっおおおおおおおおああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」 疾走する。 空はすでに白み始めている。 疾走する。 やがてすぐに自分の家が見えてくる。 家の外に誰かがいる。 「う〜?おにーざーん?よるなのにどこにいってたんだどぉ〜?」 れみりゃだ。夜間に起き出して、飼い主の不在に気づいたのだろう。男は駆ける。 手を振るれみりゃがあっというまに近づく。れみりゃもまた、万歳のポーズでよたよたと歩み寄る。 「おなかすいたっどぉ〜。おぜうさまはぷっでぃんたべた」 「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」 激しい加速からのラリアットがれみりゃのふとましい顎を刈り取り、 れみりゃは慣性の法則にしたがって男の家の玄関を、襖を、居間を、寝室を、仏壇をなぎ倒し、 壁をも貫通するとさらに彼方へと吹き飛んでいった。 男は、登り行く太陽に握りこぶしを振りかざす。ちょうどあのライブの時にしたように。 「んっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!すっっっきりーーーーー!!!!!!!!」 * * * * 人々は鬱憤に飢えていた。 いまや人々は、ゆっくりがしばしば為す”悪さ”にかこつけて、または特に理由がなくとも鬱憤を晴らせる。 人々にはストレスが必要だったのだ。 「う〜う〜♪おぜうさまのびせいはせがいいぢだどぉ〜♪」 「うふふ、本当ね」 「だんすもばっちり☆きまったどぉ♪」 「そうね、とっても上手だったわ」 主催のスタッフはれみりゃをぎゅっと抱きしめる。 「うー!いっしょおけんめいおしごとしたからぁ、おなかすいちゃったどぉ〜。ぷっでぃん〜」 「今持ってきてあげるわね」 これは、ただ拾われただけのれみりゃである。 拾われた基準は「一番長生きしそうだから」ただそれだけ。 ただコンサートに使うため、おだてて褒めて、何不自由ない生活をさせている。 客にもこのことはちゃんと教えてある。 <・れみりゃちゃんは毎日美味しいものを食べておうたを練習しています。 ・おぜうさまはぁ、あいどるなんだっどぉ〜!ぷっでぃんたべたいどぉ〜!> そのことが、客達の心をより激しく揺さぶるだろうから。 能天気で放埓な、幸運の寵児。 人々は、ライブで自制心の縁ぎりぎりまで溜めた”歌姫”れみりゃへの苛立ちを、家に帰って存分に発散するだろう。 それこそがこのライブの目的なのだ。 スタッフは冷暗所に保存したぷっでぃんをれみりゃのために取り出す。 そのぷっでぃんはあたたかいお日様の匂いがした。 「(うう、私も早く帰ってうちのれみりゃいじめたいわぁ……)」 END ■ □ ■ □ 夏といえばライブですよね!ライブ行きたい 十京院 典明 このSSに感想をつける
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「ふたば系ゆっくりいじめ 410 尋ね人ゆっくり/コメントログ」 これの続きはどれでしょう?(「捕まりゆっくり」は違うしなぁ) -- 2010-01-23 22 58 13
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「ふたば系ゆっくりいじめ 798 売ゆん婦4/コメントログ」 おげぇ… -- 2010-07-13 00 48 31 れいむマジきめぇwwれいぱーも十二分以上にキモいがその五倍はキモいwwwww -- 2010-11-03 21 49 28 どんな形であれゆっくりできないゆっくりの話を読むのはヒャッハーな気分になりとてもゆっくりできる -- 2011-02-18 16 00 55 うんうんwおもしろくなってきたぜww -- 2011-06-29 08 10 06 このまりさ。。。できる!!! -- 2011-10-20 04 09 16 情報屋まりさマジかっこいい...人間だったら惚れるかも -- 2013-04-19 22 17 02 情報魔理沙と付き合いたいぐらい性格が好き。 ちゃんと思いやりの心を持つ善良。 -- 2024-02-13 19 37 52
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「ふたば系ゆっくりいじめ 1055 さげゆん/コメントログ」 森に帰っても、異端として同属に殺されるだけじゃね? -- 2010-08-20 02 17 34 二行さんのこういうネタは本当良いなぁ。和む -- 2010-09-03 04 09 30 ごみを放す集落ははやり病で皆死ね -- 2010-11-29 02 58 25 ううん、確かに勝手に動き回る飾りって美しそうだ。 すんげぇ、煩そうだけどもw さげゆん、切った後に何かに紐が引っかかって死ぬ奴とか多そうw 異端扱いは、他のゆっくりが過去にされた記憶が有れば一応同族として扱われるんじゃね? -- 2010-12-11 22 55 58 ↓↓うわぁ… -- 2011-04-16 03 00 22 ↓↓↓馬鹿丸出しワロタw -- 2011-12-30 12 08 17
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※今までに書いたもの 神をも恐れぬ 冬虫夏草 神徳はゆっくりのために 真社会性ゆっくり ※今現在進行中のもの ゆっくりをのぞむということ1〜 ※注意事項 ゆっくりの形じゃ最初のひと跳ねもできないだろとか突っ込み禁止。 お日様昇って天高く、ぽかぽか大地を照らしてる。 風はびゅうびゅうまだまだ寒く、北から元気に吹いて来る。 睦月一月、春まだ遠い。とある冬の小春日和。 ここ数日続いていた陽気に誘われて、うっかりおうちの外に出かけてしまったれいむ一家は困っていた。 「ゆううぅぅ……」 「「「「「みゅぅぅぅ……」」」」」 人里近い川べりに、しょんぼり屯する一家、母れいむと六匹の赤れいむの総勢七匹。 水面に困り顔の影を落としても、事態が改善するわけもなし。 「水さん、ゆっくりしていってね!」 「みじゅしゃん、ゅっきゅりちていっちぇにぇ!」 もちろん川の流れに呼びかけたところで、急流がゆっくりしてくれるはずもなし。 さらさらと音を立てて流れる小川に恨みがましい目を向けて、「はぁ」と溜息と共に愚痴を吐くのが関の山だ。 「これじゃかえれないよ……」 「みゃみゃ、ひゃやくおうちにきゃえりちゃいよ……」 そう、れいむ一家のおうちはこの小川の向こうにある。 川幅おおよそ十尋にして、深さはおおよそ一尺ほどもあるだろうか。 この小川、一昨日れいむたちが渡った時には幅も深さも半分ほどでしかなかった。ゆっくりでも這って渡れる浅瀬もあった。 それが急に大きくなったのは、れいむたちを外に誘い出した小春日和に原因がある。 大本を辿れば妖怪の山にたどり着くこの小川に、この数日の陽気で生まれた雪解け水が一気に流れ込んだのだ。 妖怪の山から霧の湖へ、霧の湖からこの小川へ。 本格的な春が訪れた訳ではないから、流出した水の量もまだ微々たるもの。 だが、その微々たる量が、今はこうしてれいむたちの帰宅を断固として拒んでいた。 「ゆぅ……どうしよう。こまちのわたしぶねはここからだととおいし……」 この小川を遡っていけば、上流にゆっくりこまちが営む渡し舟の里がある。 だが、そこまで行こうと思えば、ゆっくりの足では丸一日。赤ちゃん連れでは二日を見ないと難しい。 今の一時的な増水が収まるまで待つのとどちらが早いか、れいむの餡子脳では判断しにくいところだった。 というよりも、餡子脳では考えても無駄なことであった、というべきか。 「あ。ゆっくりだ」 「ほんとだ。親子だ」 「ゆ?」 親子揃って無益な思索にどれほどの時間を費やしたことだろう。 状況の変化は、結局れいむが起こすのではなく外部からやってきた。 「ゆゆっ。ゆっくりしていってね!」 「ゆぅ〜、にんげんしゃんだ!」 「ゆっくちー!」 「ゆきゅちちちぇいっちぇにぇ!」 くるり、とれいむ一家が振り向いた先には数人の人間の少年がいた。 口々に挨拶するゆっくり一家に、人間に対する不審はない。 もともと魔法の森の奥に住むこの一家のこと、人間に出会うことも稀なために先入観というものがないのだ。 「にんげんさんは、ゆっくりできるひと?」 だから、とりあえず親れいむは聞いてみた。 相手のことをれいむは何も知らないのだから、本人に聞いてみるのが一番だ。 人間さんはとてもゆっくりできると、れいむの餡子脳の中に伝わる一族の記憶が伝えている。 きっと快く答えてくれるだろうと、根拠なく想った。 「ん? 俺たちはゆっくりしてるぞ」 「ゆっ。よかった、ゆっくりしようね!」 「「「「「ゆっきゅちちようね!」」」」」 返ってきたのは期待通りの返事で、れいむたちは今の状況も忘れてすっかり嬉しくなり、ぴょこんぽこんとその場で飛び跳ねた。 一方の人間の少年たちといえば、もちろんその場で飛び跳ねるような事もなく、ふいっと視線を水かさの増した川へと遊ばせる。 「……川を、渡りたいんだ?」 「ゆっ! そうだよ、れいむたちのおうちはこのかわさんのむこうにあるんだよ!」 ぴょこん、少年の問いかけにもう一度れいむはその場で飛び跳ねた。 人間さんと会えた喜びでゆっくり忘れてしまっていたが、今はそれが一番大事なことのはずなのだ。 川の流れは激しくて、れいむ家族は愛するれいむ(同種のつがいらしい)が待つおうちに帰れない。 「ふぅん……」 「でも……ねぇ、れいむ?」 そう窮地を必死に訴えるれいむにも、少年たちの視線は相変わらず川のどこかに向けられていた。 人間さんがどこを見ているのか、れいむは不思議に思って高い場所にあるお顔がどこを見ているのか必死に追いかける――と、 少し上流の川の中ほどをゆっくり進むそれを発見して納得がいった。 「まりさたちは川を渡ってるよ?」 れいむが見つけたそれ、人間さんが指摘したそれは、別の群れのまりさの家族が川を向こう岸に帰っていく光景だ。 親まりさ一匹に、赤まりさ六匹の計七匹。 川岸で侘しく佇むれいむ一家と同じ数。でも彼女たちはおうちに帰ることが出来て、れいむたちには同じことはできない。 「ゆぅ……まりさはおぼうしでかわをわたれるんだよ。れいむにはできないんだよ……」 「ゅー。まりしゃのおぼうち……いいにゃぁ……」 「うらやまちいにぇ……」 だって、それが生まれついてさだめられたゆっくりの種としての特徴だから。 まりさは帽子を舟代わりにして水辺を過ごすことができて、れいむは川を渡ることが出来なきない。 親一匹と赤ゆっくり六匹、羨ましそうにまりさたちの後姿を見送ることしか出来ないのだ。 れいむたちだって、おうちにかえりたいのに。 おうちにかえって、もう一匹の親れいむと何日かぶりにすりすりしたいのに。 ちょっとしたお散歩と餌集めのつもりが、陽気に誘われて随分遠出してしまった。 さぞかし、お留守番の家族は心配しているに違いない。早く、顔を見せてゆっくり安心させてあげないと。 思えば、最初から留守番れいむは遠出に反対していたのだ。 ここまで連れて来た六匹の赤ちゃんたちは、れいむとれいむの初めての子供だった。 秋口にれいむ達はつがいになって、冬篭りに入る直前に初めてのすっきりでこの子達を作った。 たっぷり食料を蓄えた巣穴で、安全に大きくなるまで育てる為に。 春の目覚めを十分に成長した子ゆっくりとして迎え、危険の少ない状態で外界での生活をスタートさせるために。 ああ、だから赤ちゃんたちを連れてくるべきではなかった。 今はちょっとゆっくりできそうだからって、お外の世界を見せてあげようなんて思うんじゃなかった。 れいむの反対を聞いておくべきだったのだ。何がおきるかわからないよ、ってれいむはちゃんと注意してくれていたのに。 川の流れに逆らって、ゆっくり遠ざかるまりさの姿を見送りながら、お出かけれいむの焦りは募る。 かなわない願いだけれど。 今は、ほんとうに、早く、帰りたい。 「ふぅん……じゃ、渡れるようにしてやろうか」 ――その、見送ることしか出来ないはずのものを、人間さんがこともなさげに聞いてきた。 びっくりして、れいむ一家はお互いに顔を見合わせた。 与えられた衝撃と、それによって生じた困惑と、そこに芽生えた期待の大きさは、みんな同じだった。 この川を渡るなんて、れいむたちにはとてもじゃないけれどできないこと。 だけどれいむたちより大きくて、とてもゆっくりしているはずの人間さんの言うことなのだ。 人間さんが口にすることならば、それはとってもゆっくりできることのはず。疑うことなんて何もない。 そして、お出かけれいむだけではなく、赤ゆっくりの心も一つ。 おうちに早く帰りたい。 れいむ一家は「ゆっ」と一つ頷きあって、それから一斉に人間さんへと顔を向けた。 「ゅんっ、ほんちょ?」 「にんげんしゃんはゆっくちできるね!」 「ゆっ、ありがとうにんげんさん! れいむ、とってもうれしいよ!」 そして顔の次に向けるのは、感謝感激雨あられ。 なんて人間さんは凄いんだろう。 れいむたちに出来ないことを簡単にやってのけるのだ。 「んじゃ、と……おい」 れいむたちが提案を受けれたことに、少年たちも満足そうにお互い笑いあった。 ただし、全員ではない。幾人かは、どこか不満そうな顔で仲間たちの行動を少し離れたところから見守っていた。 何か言いたげなその連中を一瞥して黙らせ、れいむを助けてやると請け負った少年たちはさっそくれいむ親子の周りに集まる。 ひょい、と男の子の一人がれいむを顔の両側から抱え込むようにして手を差し込んでくる。 少しびっくりしたけれど、れいむはそれに逆らわない。きっと、これからゆっくりできることをしてくれるはずだ。 次の瞬間、地面が、すぐ側にいた赤ちゃんが、目の前にどこまでも広がるように見えた川面さえも一気に遠ざかり、 視界が大きく広く拡大する。 その絶景、まるで鳥さんになったよう。 「ゆ? ゆーん、おそらをとんでるみたい♪」 「おしょらをとんじぇるみちゃい!」 気が付けば、赤ちゃんたちもいつの間にか少年たちの手にそれぞれつかまれている。 今まで目にした事がないような光景に出会っているのは、赤ちゃんたちも同じこと。 きゃっきゃと賑やかに声を交わすその様子は、とってもゆっくりできているようだった。 でも、『人間さん』の中には『ゆっくりできていない人間さん』もいたようだった。 「おい、やめなよ。いじめはよくないってけーね先生もいってただろ?」 「ゆぅ、いじめはゆっくりできないよ?」 少年たちの一人――仲間たちから先ほど距離を置いた少数派の少年たちの一人が、少し震える様子で上げた制止の声を聞いて、 れいむは思わず自分を抱える少年の顔を見上げて言った。 不満を洩らした人間さんは、れいむのかわいい赤ちゃんを持っていない。れいむたちより人間さんの方が数が多かったらしい。 「ゆー?」 「ゆゆっ?」 れいむのかわいい赤ちゃんたちも、きょとんとした顔を自分を手にした人間さんの顔へと向けていた。 それは、不満顔の人間さんが怒るのも当然だとれいむは思う。 こんなにもかわいらしい赤ちゃんを、手の上に載せて挙げられないというのはあまりにも不公平というものだろう。 独り占めなんていじめっこのすることだ。ゆっくりの世界では一番しちゃいけないことのひとつなのに。 「バーカ、いじめじゃないよ。儀式だ儀式」 「こないだ先生に習ったろ? 蜀の国の諸葛孔明は荒れた川を治めるのに人間の顔に似たお菓子を川の中に投げ込んだって」 「それが饅頭のはじまりだってね。だから、これが饅頭の正しい使い方だろ?」 「そうだけど、そうじゃないだろ。先生にバレたら怒られるぞ」 「ゆ……ゆゆー?」 人間さんたちのお話の内容は、れいむには難しくてわからない。 なんでケンカしているのかも、いまいちはっきりとはわかっていなかった。 わからないけれど、人間さんたちが普通にれいむたちを運んで川を渡してくれるわけではないことだけはわかった。 それはそうだろう。川はいつもより深くて急だ。 れいむたちに渡れないんだから、きっと人間さんにも危ないんじゃないだろうか。 だから、れいむたちにも渡れるように、逆に川さんにゆっくりしてもらうんだろう。 「ゆゆっ? ゆっくりりかいしたよ! かわさんにゆっくりしてもらうほうほうがあるんだね!」 「ゆー! ゆっくちできにゃいかわさんが、ゆっくちできりゅかわしゃんになるんだね!」 「ゆう、にんげんしゃんはすぎょいんだにぇ!」 赤ちゃんたちがいうように、人間さんは、やっぱりすごい。 川さんにゆっくりしてもらえる手段なんて、れいむどころかドスもぱちゅりーも知らないはずだ。 れいむは人間さんの会話を素直に受け取り、とても素直に感動する。 「実はそうなんだよ、れいむ。だから一緒にがんばろうな」 「あのなぁ……」 「ゆゆっ。よくわからないけど、れいむがんばるね!」 人間さんの一人がえっへんと胸を反らせて答え、別の一人が、「はぁ」と疲れたような吐息を吐いた。 ため息をついた一人はぶすっとした仏頂面で胸張る一人をにらみつけ、 「俺たち知らないからな」 「バラさなきゃ、先生だってわかんねえよ。っつーか先生に気づかれたらお前ら殴るからな」 逆に凄まれて「わ、わかったよ」と怯む。 やっぱり、れいむのあかちゃんを持ちたいのに、独り占めされてるから怒ってるんだ。 れいむはそう理解して、頭上の少年にわが子を宥めるような優しい声を掛ける。 「ゆぅ。にんげんさん、けんかはよくないよ?」 「よしよし、待たせたな。じゃあ行くぞれいむ」 少年は、れいむのいさめには答えない。変わりに笑って川のほうを見るようれいむに促した。 いよいよ、この川を渡れるようにしてくれるらしい。 れいむは先ほどの人間同士のやりとりなど忘れ、満面の笑みがパァっとれいむの顔に咲く。 「ゆーん。これからかわさんにゆっくりしてもらうおねがいをするんだね! ゆっくりがんばってねにんげんさん!」 「お前も頑張るって今言ってたじゃん……」 それは、期待通りの話題変更ではあったけど。 れいむの能天気な受け答えを聞いた少年と、彼の仲間たちの顔にいつしか強い嘲りと愉悦の色が浮かんでいた。 だが、近づく帰宅への期待に胸膨らませるれいむ一家は、頭上はるかな人間達の表情の変化に気が付かない。 気付けといっても、顔を直接見あげることの出来ない位置に固定されたれいむたちには無理な話ではあったが。 「……ゆゅっ」 れいむ一家が微妙な空気の変化に、なにも気が付くことのないままに。 一人の少年が赤れいむを掴んだ右腕をすっと身体の後ろに引いた。 唐突な動きに赤れいむはほんの少し驚いたようだったが、怯えの色は微塵もない。 人間さんはゆっくりできる存在で、ことにこの人間さんたちはれいむたちを助けてくれる特別ゆっくりな存在なのだ。 なんで恐がる必要があるというのだろう。 「おねえちゃん、りぇいみゅおしょらをふわふわすぃーってとんじぇりゅよー」 「きゃっきゃっ♪」 「ゆっくりできてるねおちびちゃん!」 「うまくやれよー、弥平次」 「任せとけって」 赤ゆっくりたちの歓声、それを見守る親れいむのゆっくりした声、はやし立てる周囲の少年たち、 そんな彼らに向けて空いた側の手でガッツポーズを作って応える少年。 何が起きようとしているかわかっている者と、何もわかってはいない者。 今だけは、お互いの感情は一致している。 「できればまりさにぶつけたいな」 「あ、それ面白そう。ぶつけたヤツが一等賞だ」 「ゆゆーん、もうすぐおうちにかえれるね!」 「おうちにきゃえったらおきゃーしゃんとゆっきゅちちようにぇ!」 即ち、これから起きること、その先に待つことへの期待と喜悦。 「んじゃ、第一球――」 「ゆっゆぅ、たきゃいたきゃい〜♪」 一瞬先には、その明暗はくっきり分かれてしまうのだが。 「――投げましたぁっ!」 「ゅ……ゅぅぅぅぅぅぅぅっっ!!?」 一瞬の静止から、サイドスローで少年がれいむを掴んだ腕を振りぬいた。 突然身体に掛かった強烈な加速感に、掴まれた赤れいむの歓喜の声が驚愕の叫びに変じたその瞬間、 すっかりゆっくりしていたれいむ一家の目には、わが子が、姉が、妹が、マジックのように消えうせたように見えた。 だから、川面の方から聞こえてくる同属の声を、すぐには誰のものか認知しない。 「ぁぁぁぁっ、いぢゃいっ! あびゃいっ!? えべべ……えびょっ」 ぱしっ! たしっ! じゅぶっ……じゃぼん。 ぎゅるぎゅるっ、と横回転を加えられた赤れいむは、確かに二回水の上を跳ね、三回目で勢いを失い、 それからつんのめるようにな軌跡を描いて、その次の着水であっさり流れの中に飲み込まれていった。 それは、いわゆる石切り遊びと呼ばれる遊びと同じものだった。 というよりも、石切り遊びそのものだ。使うのが、平たい小石ではなく、れいむ――ゆっくりであるということが違うだけで。 横投げで、投擲するものに強い回転を掛け、浅い角度で水面で跳ねさせてどこまで遠く、何回跳躍するかを競う。 投擲物は飛び去るうちに空気の抵抗を受けて回転数を減じ、着水時の抵抗力を失って最後には水中に没することになる。 たった今、赤れいむがあっという間に水没したように。 「……おちび、ちゃん……?」 「おねーしゃん……いにゃいいにゃいしゅりゅの?」 「いみょうと……れいみゅのいみょうと、きゃくれんびょしてりゅの……?」 ゆっくりたちが、ゆっくりと異変に気づいたころには、すでに川へ向かって投げられた赤れいむの姿はどこにもなかった。 音を立てて流れる清流の中に、一瞬餡子の黒が浮かんだが――それも一瞬のこと。 強い流れの中に溶けて消えうせ、投じられた生き饅頭の残滓は綺麗に何も残らない。 だから、れいむたちにはわからない。 なぜ、人間さんが先ほどまで手にしていたはずの家族がいないのか気が付かない。 順番にその身を襲うだろう、命の危機に気が付かない。 もっとも、それに気が付いたところで、文字通り生死を握られた状況ではなんら益するところはなかっただろうが。 「んあー、おしいっ!」 「どこがおしいのさ? まりさ、気付いてもないよ」 「次はせめて、まりさに水音が聞こえるぐらいに近づけろよな」 混乱するれいむたちの頭上で、少年たちが賑やかに言葉を交わしている。 だがきょときょとと家族の姿を探す一家に、その声は聞こえていても内容を理解することはできなかった。 理解できぬままに、次の危機は無情にもやってくる。 「っせえなあ。じゃあ助左、お前やってみろよ」 「任せろよ」 周囲のブーイングにすっかり拗ねた顔をする弥平次と呼ばれた少年に、助左と呼ばれた少年は不敵な笑いを浮かべて応じ、 彼と同じく赤れいむを掴んだ腕をすっと身体の横へと引いていた。 「……ゆ? おにーしゃん、あしょんでくりぇりゅの?」 「おう、遊ぶぞ。れいむで遊んでやる」 視線が急に水平に動いたことに驚いたらしく、掌中の赤れいむがずれた問いを発する。 そのずれた問いに返す少年の返答も、また少しばかり言葉をずらしたものだった。もちろん、こちらは意図的にずらしているのだが。 「ゆゆ……? りぇいみゅであしょぶにょ?」 姿の見えぬ姉妹を探すうちに心に浮かんだ一抹の不安が、幼い赤れいむにその問いを思い至らせたのだろうか。 微妙な言い回しに気が付いて鸚鵡返しに聞き返す声は、ほんの少し不安に揺れていた。 横目で親の方を見れば、やはり心の中に広がりつつある形容しがたい不安に瞳の光を揺らがせる、親れいむの視線と目が合った。 あるいは、腕を引いた少年のしぐさが先の赤れいむの消失のサインだったと思い至ったのかもしれない。 その未だ人間の善性を信じつつ、それでも禁じえないだろう不安の様子が、芽生え始めた人間への恐怖が、 少年に心地よい快楽を与えることを赤れいむはついにその死までしることはなかった。 「そうだ。おねえちゃんのあとに、つづけぇっ!」 「ゆあっ、ゆぅぁぁぁぁぁっ!?」 少年の威勢のいい掛け声と、赤れいむの恐怖と驚愕が相半ばした悲鳴が川原に響く。 今度ははっきりと、親れいむたちは家族が消滅するプロセスを順序だてて目にすることが出来た。 「れっ、れいむのおちびちゃああああんっ!!!」 「……ゅぁ?」 「おっ、おねえちゃあああぁぁぁん!!」 家族の絶叫がとどろく中、六尋ほど先の川面から小さな水音がじゃぽんと聞こえた。 今度のれいむは短い跳躍を五回繰り返し、異常を感知して漕ぐ速度を上げたまりさ一家にほんの少し近づいて、死んだ。 最初の赤れいむと同じく、この世に生きた証を何も残すことはなく、親に最後の言葉を遺すことすらなく、跡形なく溶け崩れて死んだ。 「なっ……れいぶのおぢびぢゃんだぢがっ……。にんげんざん、ごればどういうごどおおぉぉっ!!」 れいむは信じたくなかった。 これが現実だと信じたくはなかった。 娘がいきなり川の中に投げ込まれ、あっけなく死を迎えたことが現実の世界に起きたことだとは信じたくはなかった。 先ほどと変わらない笑顔をれいむに向けて見下ろしている人間さんが、こんな非道を唐突に行う存在だと信じたくはなかった。 「儀式するって言ったじゃん」 その祈るようなれいむの願いを、少年たちは笑顔のままあっさりと折り砕いた。 「饅頭を川に投げ込むって言ったろ。聞いてなかったのか、お前?」 「おまえら饅頭なんだからさぁ。その時点で気づけよ」 馬鹿だなぁ、と笑う少年たちの口元には、れいむにもわかるほどくっきりと嘲りが浮かび上がっていた。 それを見てれいむは、生まれてはじめて憎しみというものを知った。 生まれてはじめて絶望というものを知った。 生まれてはじめて悪意というものが存在することを知った。 それらは全て、ゆっくりできるはずの人間という存在から与えられた。 つい先ほどまで、共にゆっくりしていたはずの、人間さんから。 「でいぶのあがぢゃんはまんじゅうじゃないいぃぃっ!」 「饅頭だよ、キモチ悪いしゃべる饅頭。ほら、その証拠に」 「……っ!!」 「ぃぎゃあああぁぁぁぁっ!!?」 「ほぉら、餡子入りの饅頭だ」 一瞬の躊躇もなくれいむの右頬を毟り取った少年は、身を襲う激痛に泣き喚くれいむの鼻先にそれを突きつけてけたけたと笑う。 やがて苦痛に身を捩るばかりで突きつけられた事実に反応を見せないれいむに飽いたのか、千切ったその部分を川の中に投げ捨てる。 「おきゃーしゃーん!?」 お楽しみは、まだまだあるのだ。 このゲスしかいない屑饅頭の分際でクソ生意気にも、親を案じるようなミニ饅頭を筆頭にして。 「おきゃーしゃーん、じゃねぇよ。ほらさっさと飛べ」 「ぉきゃーしゃんをいじめりゅ……にゃぁああぁぁぁ、おねーちゃんがぁぁぁぁぁっ!!?」 「ゅぁぁっ、れいみゅしにちゃくにゃ……ゃぁぁぁぁぁっ!!!」 頬を大きく千切り捨てられて、身を絶えず苛む激痛にほとんど麻痺していた親れいむの精神がようやく我を取り戻したのは、 愛するわが子の怒りや悲しみに満ちた絶叫が次から次へと飛ぶように遠ざかるという恐るべき事態に直面してからだった。 「ぉあ、あああああっ! おぢびじゃあああああああん!!」 我に返ったところで、もう遅い。 我に返ったところで、何も出来はしない。 親れいむにできることは、命に代えても惜しくはない愛するわが子達が、 次から次へと決して対岸に届くことない死への跳躍に駆り立てられる姿を見送ることだけ。 いや、そもそも描かれる軌跡は対岸へと向けられてすらいない。 すべて、川の中ほどまで進んだ他所の群れのまりさの家族へと向けて投げられているのだから。 「沈め、沈め!」 「あーっ、当たらねぇーっ!?」 「丸すぎてちゃんと飛ばないんだよ。やっぱ何に使ってもだめだな、ゆっくりって」 少年たちが楽しげに笑い、天を仰いで嘆くたび、 「ゅびゃぁぁぁぁぁっ、ゆびぇっ、ぃゃだっ、たじゅけぶびゃ!?」 「ゅぎゃっ! ゅぐぅっ、おぎゃーじゃばばっ!!」 「やだやだれいみゅおちょらとびちゃくにゃ……ぶぎゃぅ……」 赤れいむの声が遠く、彼方へ遠ざかっていく。 二度と親れいむの肌が触れ合えない彼方へと。 投じられた赤れいむの誰一匹、対岸にたどり着くことはなかった。 親れいむと一緒にお散歩に出かけた誰一匹、二度とおうちに帰り着くことはなかった。 六匹全てが、親れいむの目の前で川のせせらぎの中に没して溶けて崩れて死んだ。 親れいむは叫び続けた。全てが終わるまでずっと叫んでいた。 よほど強く投げられたのだろう、最後の一匹は最初の着水の衝撃に耐え切れずに弾けて死んだ。絶鳴すらなかった。 吹き飛んだ餡子が川の中に沈み、リボンが流れに乗って視界から消え去る頃には両の目から流れ出る涙も、 悲鳴を上げるべき喉も枯れ果て、乾き切っていた。 「あ゛……ゅあ゛あ゛……」 頬に痛々しく開いた傷口の痛みすら、もう欠片も感じない。 後に残ったものは、れいむの中を満たすものは、全てを失った絶望だけ。 少年の腕に抱かれて、れいむは生きながらにして死んでいた。 「もぉ、やだぁ……おうち……かえれない……」 あるいは、自分が殺される順番を待ちわびていたのかもしれない。 もう、おうちで待つ伴侶のれいむに会わせる顔などあろうはずもなかった。 生気のないうつろな眼差しを対岸にあるおうちの方角へ向け、在りし日の幸せな生活を、去りし日の安らぎに満ちた家族を想った。 それを壊したのは他の誰でもない、自分だ。 自分が子供たちに早く外の世界を見せてあげたいなどと思わなければ、 きちんと理由立てて反対してくれた伴侶れいむの言葉に耳を傾けていれば、 外の世界に出たとしても、調子に乗ってこんな遠くまで遊び歩かなければ。 「れいむが……れいむがばかだから……みんな、みんな……」 幾つものif全てで、れいむは死に繋がる選択ばかりを選んできた。 今考えれば、れいむにも如何に愚かな試みだったかが嫌というほどによくわかる。 だって、こんな最悪の結果を迎えてしまったんだから。 だから、れいむにはもうゆっくりできない人間たちをうらむ心はなかった。 ここで彼らに会わなかったとしても、きっとどこかで自分たちは死んでいただろう。だって、れいむはとびきりのばかだったから。 生きていることが罪になるほどの、誰もゆっくりさせてあげられない、自分の子供さえゆっくりさせられないゆっくりだから。 今からこのゆっくりできない人間さんたちから与えられるだろう死は、れいむにとって当然の罰なのだと思えた。 「れいむ……ばかでごめんね。れいむをおいてっちゃうことになるけど……せめて、おちびちゃんはあっちでりっぱにそだてるよ……」 だから、れいむはこっちでゆっくりしてね。 心のそこからそう願い、れいむはゆっくりと目を閉じる。 次にくるのはお空を飛ぶ感覚か、れいむの身体を何かが破壊する激痛か。どちらでもよかった。 全てを受け入れる心は出来ていた。与えられるものが死であるなら、どんな苦痛を伴うものでも構わない。 「おーい、何言ってんだよ」 「ゆぅ……?」 与えられるものが、死であるなら。 「お前はおうちに帰るんだよ」 「……ゆ゛!?」 誰が、生など望むものか……! 「お前をおうちに帰すために、ガキども川に投げ込んでやったんじゃないか。お前が帰んなきゃどうすんだよ」 だというのに。少年の笑顔が、れいむの心を痛烈に一打ちして蘇生させた。 ま、水が収まるまでゆっくりしろよ。少年はにやにやと嫌な笑いを浮かべてそう告げた。 れいむの願いと対極をなす、あまりにも残酷な言葉をそんな笑顔で淀みなく告げた。 「……あっ、あがぢゃんみんなじんじゃっで、ごろされぢゃっでがえれるわげないでじょおぉぉ!?」 だがそれに驚き、叫ぶれいむは本質を理解していない。 自分を抱えたままの少年が、いったいれいむに何を望んでいるのかを。 当然、ことの本質を理解しようともしていないれいむの抗議になど、少年はまるで取り合わない。 そうやって、れいむの身体ではない、心を苦しめ、痛めつけることが目的なのに、この饅頭はまるでわかっていないのだから。 楽しげに笑う少年の意図を、れいむはまったく理解しない。 理解しないままに、少年が望むままに苦しみ、悶え、のた打ち回る。 「ごろじでっ! あがぢゃんだぢどおなじみだいに、ごろじで! すぐごろじで! れいぶをごろじでっ!!」 「あっそう。じゃあ好きにしろよ。とりあえず傷は直しておいてやるから」 「ゆびゅっ!?」 なおも殺してくれと喚きたてるれいむに、少年は肩から提げた布地の鞄から竹筒の水筒を取り出した。 そこから頭に振りかけらた液体が目に染みて、思わずれいむは悲鳴と共に目を閉じる。 一瞬、ゆっくりが死ぬことのできる毒か何かと期待したが、もちろんそんなものではなかった。 それどころか、引き裂かれた頬の傷口があっという間に痛みを失っていくのがわかる。 恐る恐る、髪を伝って口元に一筋の流れを形作ったその粘度の高い液体を舐めてみる――とても、甘い。 傷つき、死をひたすら望むほどに疲弊した心すら、油断すると癒してしまいかねないほどにその液体は甘かった。 それが水あめというあまあまなたべものであるとまでは、まったく野生で育ってきたれいむは知らない。 「じゃーな」 別れを告げるその言葉に我を取り戻した時には、頬の痛みはまったくなくなっていた。 頭に注がれる液体も、いつのころからか途絶えている。慌てて目を開けたれいむの 先のれいむの懇願など気にも留めず、いっそ丁寧なぐらいゆっくりと、安定した岩の上にれいむを置いて手を振っていた。 岩場から飛び降り、れいむがその背中を追う頃にはすでに少年たちの姿はずいぶん先にある。 「まっ、まって! おいでがないでっ!」 「礼はいらないぞー」 「あと一日も待ってりゃ水は引くと想うぞ。よかったな、赤ちゃん死なせた代わりに家に帰れるぞ」 まあ、多分ちびが死ぬのと水が引くのは関係ないけどな。 そう言って、少年たちはどっと愉快そうに笑いあっていた。 「でいぶをごろじで! ごろじでよぉ!」 「やーだよ。死にたきゃ勝手に死ねば?」 れいむが泣けば泣くほど、叫べば叫ぶほど、少年たちは楽しそうに肩を震わせて笑った。 顔がキモい、声がキモい。ガキ殺したぐらいで必死なのがキモい。 理由を挙げ、せせら笑い、だが川原を離れる歩みは止めずに、れいむからどんどんその姿が離れていく。 「おでがいじばず! でいぶをごろじでぐだざいっ! れいぶを、でいぶをあがぢゃんのどごろにいがぜでぐだざい! おねがいじばず、おでがいじばぶっ!!」 れいむは泣き喚きながら、追いかけた。 精一杯、尖った石が親れいむの底面を抉り、切り裂く痛みなど気にもならなかった。 致命傷には至らない痛みなどどうでもよかった。 ひたすらに、自分の命を少年達が摘み取ってくれることを希った。 彼らがれいむ自身の命よりもはるかに重い、赤ちゃんたちの命を遊びのために全て流し去ってしまったように。 だが子供達は無情にも、れいむの願いなど一顧だにせず嘲り笑いながら走り去っていく。 どんなに跳ねても、どんなに飛んでも、その背中にれいむが追いつくことは決してなくて。 「どぼじで! どぼじでごろじでぐれないのおぉぉぉ!!」 ただ、痛々しい親れいむの絶叫だけが、誰もいなくなった川原に轟いた後。 しばらくして、大きな水音がひとつ新たにバシャンと響き、川原は元の静けさを取り戻した。
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あまあまスイッチ 39KB 【注意】 冗長です ネタ被りはご容赦を ある日、近所に住む菓子職人が箱一杯の飴を持ってきた。 時々あることなのだが、こいつが持ってきたものが美味かった例がない。 「美味しかったら店に並べるに決まってるだろう」 「正直者はホントむかつきますね。てか何で俺のとこに?」 「君なら使い道があると思ったんだけど」 「自分とこのゆっくりの餌にするべきだそうするべきだ。だからもって帰れ」 こいつの家には菓子の材料用のゆっくりが大量にいる。 どうせこの飴もゆっくりが材料なのだろうし、還元すればいいだろうに。 「あれらの餌にこういうものをやると、次から餌を食べなくなるんだ。 死んだほうがマシ、と思うのかは知らないけれど、餓死されるのは困る」 「だったら飼いゆにやれば? この前子供が産まれたらしいじゃないの」 「ゆっくりの餌にゆっくりをあげるとか、よくそんなひどい事言えるね」 「どうせ巡り巡ってゆっくりの腹に収まるのに。ショートカットくらいいいんじゃね?」 「それについてはあんまり触れないでくれよ」 「とにかく産業廃棄物なら産廃業者にお願いするのが世の中の常識であり俺んちに不法投棄すんな」 「わかったよ。はいこれ」 わさビーフ1袋。 なめとんのか。 「ふぉまえふぉふぁいふふぁふぃっふぃりふぁなふぃふぉふふぇふぁいふぉいふぇふぁいふぉうふぁな」 「食べるか喋るかどっちかにしてくれよ」 食べた。 「じゃあそれが代金ってことでよろしく頼むよ。たまにはうちのケーキでも買いに来てよ」 「甘いものは嫌いなんだよ」 ホントにどうすんだ、この飴玉ども。 今は家にゆっくりはいないし、愛で兄の家に持っていくとデブが蘇るし。 森に持ってってばら撒いても、ゆっくりがしあわせーとか言い出すとムカツクし。 ああ、不法投棄とか言われるのも勘弁だな、また警察で説教されたくない。 とりあえずネットでも見ながら使い道考えるか…。 「…はっ!?」 気がついたら一心不乱にクリック連打していた。 げに恐ろしきサイトがあったもんたい。 クリックするとお金がもらえる。 いや、別に本当にもらえるわけじゃない、表示される単位が「万円」というだけだ。 そして、たまに死ぬ。 これも当然本当に死ぬわけじゃないし、死ぬと金額がリセットされる。 ただこれだけの、リアルとは何の関係もないスイッチを、気付けば1時間もクリックしていた。 なんかこう、欲望の琴線に触れるストレートすぎる内容にハートが鷲掴みされたのだな、うん。 で、ここで思いついた。 これ、ゆっくりにやらせたら面白いんじゃね? 【あまあまスイッチ】 「という仕組みのものなのだよ」 「にんげんさん、どこむいてはなしてるの?」 という事で場所は家の裏手の森を奥深く進んだところ。 規模の大きな複数の群れなど、結構な数のゆっくりが住んでいるので、こいつを置くにはちょうどいい。 さすがに俺が張り付いて観察するわけにはいかないので、開けた場所に機械を置いた後、周囲を観察できるように仕掛けをした。 盗撮用の、無線で映像を飛ばせるタイプのカメラと、盗聴用の無線マイクをセットでだ。 大した距離を伝送できるわけではないが、中継器を置いてそこから有線すれば、後は自室に居ながらにして観察し放題だ。 手持ちの小型モニタを確認すると、カメラに向かって話していた俺の顔が映っている。 スピーカーは切ってあるが、横のレベルメーターが動いているので問題は無いだろう。 振り返ると、俺がその辺にいたゆっくりに声をかけて集めさせた群れが大集合している。 後はこいつらに仕組みを教えて帰るだけだ。 「そこのぱちゅりー、ちょっといいか?」 「むきゅ、ぱちぇになんのごよう?」 「お前ら全員が仕組みをきちんと覚えられるかわからんからな。 もちろん全員に説明はするが、お前には近くでよく見てもらう」 「むきゅ、そういうことならしかたないわね」 のんびりと這って近付いてきたぱちゅりーを抱えあげると、群れの中の1匹が声を上げた。 「ずるいよ! ぱちゅりーがあまあまさんをひとりじめするよ!」 いきなりこの調子でげんなりするが、今だけはちょうどいい。 「よし、じゃあお前。そう、そこのれいむ。お前に最初にあまあまをとらせてやろう」 「ゆ! さすがかわいいれいむはちがったね!!」 当然他のゆっくりからはブーイングの嵐だが、全員分のあまあまがあると言って黙らせる。 ウソは言っていない。 全員が生きて帰れるかは別問題だが。 「じゃあ、よく聞けよ、お前ら」 「「「ゆっくりきくよ!!」」」 まずは機械の外観から。 見た目には巨大なコーヒーメーカーだ。 上のコーヒーを抽出する部分に相当する場所が、飴玉タンクだ。 押し付けられた飴玉が、片栗粉をまぶした上で全部入っている。 片栗粉は飴玉同士の貼りつき防止のためだ。 最近涼しくなってきたし、近頃雨も少ないので、中で融けたりして出てこなくなるということは当分無いだろう。 下のポットを置く部分に相当する場所はスイッチになっている。 耐久性と誤動作防止の関係上、子ゆっくり程度の重量では反応しないが、これについては致し方ない。 ここに大人のゆっくりが乗ると、スイッチが反応して仕組みが作動する。 「れいむ、ここに乗ってみろ」 「ゆっくりのるよ!」 れいむはぽよんと飛び乗ったが、そんな勢いをつけなくても重さだけで反応するように出来ている。 スイッチが沈み込むと、中の機械が動く音が聞こえた。 ガコン! カラカラカラ…コトン 「ゆ、まんまるさんがでてきたよ!」 「それがあまあまさんだ」 「ゆゆっ!! ゆっくりたべるよ!! むーしゃ…がだいいいいいいいいいいいいいい!!!」 まあ、飴の歯で飴玉かじったらそうなるよな。 ていうか教えるの忘れてた。 「くそじじいいいいいい!! こんなのたべられないでしょおおおおおおお!?」 「悪い悪い。それはむーしゃむーしゃするんじゃなくて、ぺーろぺーろするあまあまさんなんだ」 「ゆゆ? ぺーろぺーろ…ししししあわせええええええええええええええ!!」 最初は飴玉を地面に置いたまま汚らしく舐めていたれいむだが、転がって食べにくいのに気がついたのか、すくい上げて頬張った。 しあわせーな顔がムカツク。 「むきゅ、あそこにのるとあまあまさんがでるのね。りかいしたわ」 「ま、それだけじゃないんだけどな」 「きゅ?」 「れいむ、そこで跳ねてみろ。あまあまさんがもっとでるぞ」 「ゆゆ!? ゆっくりりかいしたよ!」 聞くが早いか、れいむがぽゆんぽゆんとその場で飛び跳ねる。 跳ねるたびに出てくる飴玉を、跳ねながら器用に舌で拾い上げて口の中に放り込んでいく。 「しあわせーーー!!!」 周囲で見ているほかのゆっくりたちも、我慢できずに機械に群がってくる。 その時、それは起きた。 「…9、10」 「ゆべっ!!?」 元ネタだって死ぬことがあるんだから、この機械でも死なないはずが無い。 れいむは機械正面から飛び出した何本もの鉄槍に貫かれていた。 「「「ゆうううううううううううううううううううううううううう!?」」」 「むぎゅっ!? えれえれえれ…」 「おっとっと、こいつに死なれたら困るな」 ショックで吐き出したぱちゅりーの口元を押さえ、落ち着いたところでオレンジジュースをかけてやる。 その間に、れいむを串刺しにしていた鉄槍は機械の中に戻り、代わりに横から板が振るわれ、れいむの死体を弾き飛ばした。 死体に居残られると次のゆっくりが怯えて機械を使わないかもしれないので、そのための処置だ。 「…に、にんげんさん! なんなのこれはああああああ!?」 「実はな、これはゆっくりの神様からお前たちに持って行ってほしいと頼まれたんだ」 「むきゅ!?」 「ゆっくりしているゆっくりにご褒美だってな。 でも、ゆっくりの神様でも、どうしてもご褒美だけには出来なかったそうだ。 だから、時々罰があるようにもなっているんだ」 「むきゅう…そうだったの…」 こんな出鱈目でも信じるから餡子脳って素敵です。 ちなみに時々は時々だ、具体的には10回に1回。 こんな機械に乱数出すためにだけ電子機器乗せるの面倒だったので、歯車でカウントして定期的に罠が発動するようになっている。 どうせ3以上は数えられない餡子脳が相手だ、連中には乱数も同然だろう。 こうして準備は整った。 ぱちゅりーに群れ全体への説明を任せて、俺は家に戻った。 [初日] 「ゆうぅ…あまあまさんたべたいよ…」 群れの大半がこんな調子だった。 死んだれいむのしあわせー!な様子を見ているので、やはり自分も食べたいのだろう。 だが、死んでしまうのも間近に見たので、怖くてスイッチを押すことが出来ない。 「ゆん! まりさがあまあまをたべるよ!!」 機械を遠巻きに囲んでいる群れをかき分けて、1匹のまりさが機械に寄っていった。 このまりさ、狩りの腕前は群れ随一だが、おつむのダメさ加減も群れ随一。 「まりさまってね! えいえんにゆっくりしちゃうかもしれないんだよ!」 「まりさはとってもゆっくりしてるよ! だからだいじょうぶなんだよ! そんなこともわからないの?」 とまあ、こんな調子である。 群れのみんながはらはらしながら見守る中、ためらいも無くスイッチに飛び乗った。 ガコン! カラカラカラ…コトン 「ゆゆーん、しあわせー!!」 出てきた飴をひとつ頬張ると、まりさは意気揚々と巣に帰っていった。 こうなると後は早い。 「つぎはれいむがたべるよ!」 「ありすがさきよ!」 「まりさもたべたいんだぜ!」 「「まりさはさっきたべたでしょ!!」」 「それはまりさじゃないんだぜえええええええ!!」 「わからないよー!!」 次を争って群れ全体が一斉に機械に迫っていく。 遠景からのカメラの画像は、波が押し寄せていくようだった。 「や、やべっ! おざな…おさばびゅううっ!!」 「いぢゃい!! じんじゃう!! じにゅううううううう!!」 そのあちこちで、勢いに押されて潰れていくゆっくりが多発する。 「あまあまざん! じあわぜ! じあばびゃああああああああああああ!!」 爆心地であるスイッチの地点はなおひどいことになっていた。 スイッチに乗ることが出来たゆっくりも、四方八方から押し寄せるゆっくりの波に一方的に押し潰される。 運良く逃げる、などと期待できるような生易しい状態ではない。 全方位から来るゆっくりの津波から逃げられるはずも無い。 「そこまでよ!!」 ぱちゅりー渾身の大声で群れの動きが止まったとき、機械の周囲は潰れたゆっくりで埋め尽くされていた。 [2日目] 「やれやれ、これは手間だな…」 実に群れの3割が潰れ死んだ大惨事の翌日、俺は機械に積もった餡子の掃除に来ていた。 正直、欲望に忠実なゆっくりの性格を甘く見すぎていた。 「どうしてこんなことに…」 「全くだ」 隣では最初に機械の説明をしたぱちゅりーが嘆いている。 「にんげんさん、おねがいがあるわ」 さらにその隣から声をかけてきたのはありす。 このありすが、ぱちゅりーたちの群れを統治している長だった。 「ありすのむれに、とかいはじゃないゆっくりがたくさんいることがわかったわ。 せっかくのごほうびだけど、みんながゆっくりできなくなるからもってかえってほしいの」 おお、なかなか賢いありすだ。 ドスでもないのにこの規模の群れを率いているだけはあるということか。 なんでも昨日は群れの赤ちゃんの面倒を見るために残っていたが、ぱちゅりーに呼ばれて今日は来たらしい。 こいつがあの場にいればあんな混乱は無かったと思うのだが、ままならない。 「そうは言ってもな、神様からのお願いだから、俺が持って帰るわけにはいかないさ」 「ゆぅ…」 神様にかこつけているが、要するに機械の引越しをするのが面倒くさいだけだ。 別の群れに持ち込んだところで、初日の大混乱は大して変わらないだろう。 だったら、学習したこの群れに継続使用してもらったほうがいい。 「神様がせっかくくれたご褒美なんだぞ、お前がみんなをまとめて使わせればいいんじゃないか?」 「ゆううぅぅ…」 こんな感じで言いくるめて、機械を押し付けて帰った。 「ゆぅ、どうしようかしら…」 ありすは困っていた。 参謀のぱちゅりーに聞いた話によれば、昨日は群れの誰も彼もがご褒美に押し寄せたという。 特別に素行の悪いゆっくりだけ、というわけではないのだ。 今日は群れの誰もここに来てはいないが、いずれ誰かがここに来る。 そうすれば、先を争って殺到するようになるのも遠くない。 来てはいけないと制限することもできるが、いずれは破綻するだろう。 今群れに強いているすっきり制限がみんなにかけている負担を、ありす種の長だからこそ理解できた。 この上あまあま禁止などといっては、群れの統治が立ち行かなくなるだろう。 「ゆっ! ゆっ!」 そんなことを考えている間にゆっくりが1匹やってきた。 昨日の大混乱の引き金になった、あのまりさだ。 「ちょ、ちょっとまちなさいまりさ! どこにいくの!」 「ゆ、おさ? まりさはあまあまをとりにいくんだよ!」 「だ、だめよまりさ! いま、あのあまあまさんをどうするかかんがえているのよ!」 「あまあまはかみさまがくれたんだよ! みんなのものだよ! おさのものじゃないのになにいってるの?」 そう言って、長ありすの言うことなど全く聞かずに、まりさは機械に向かって跳ねていった。 「むきゅ、これはもうしかたないわ、おさ」 「ぱちゅりー…」 「むれのじゅうちんでこうたいで、かみさまのごほうびをみはるしかないわ。 そうしないと、きのうみたいなことになるとおもうの。 ぱちぇはもう、あんなのみたくないわ」 「そうね……そうするしかないわね」 「しあわせー!!」 無事に飴玉を手に入れたまりさが歓声を上げている。 それを聞きながら、長ありすと参謀ぱちゅりーはため息をついた。 [3日目] 昨日の長と重鎮たちの会議で、機械に見張りが付くことに加え、もうひとつだけルールができた。 それは「あまあまさんをもらいに行ったら、次は太陽さんが2回上がるまでもらいに行けない」だ。 一度に機械に集まるゆっくりを少しでも減らすための策で、参謀以外に重鎮の中にもう1匹いるぱちゅりーから提案された。 「これなら、ならぶのはだいたいはんぶんくらいですむわ。 むれのみんなも、このくらいならがまんできるとおもうわ」 早速群れにはルールが伝えられ、見張りの言うことを聞かないと群れから追放という罰も伝えられた。 不満を言うものがないでもなかったが、群れの大部分が一昨日の惨禍の当事者だけあり、そのことを持ち出されては黙って従った。 「まりさはきょうもいくの?」 「もちろんいくよ! れいむはいかないの?」 「みんないっぱいならんでるから、あしたにするよ」 「ゆん、じゃあまりさはれつさんにならぶよ!」 「れいむはかりにいってくるね!」 こうして重鎮ぱちゅりーの目論見通り、列を成すのは群れのおよそ半分のゆっくりたちだった。 今日の見張り担当はちぇんで、長い列を前後に走り回って割り込みやけんかを仲裁していった。 「しあわせー!」 「しあわせー!」 「しあわせー!」 「ゆびゃああああああああああああああああああ!!」 こんな具合に、適度に悲鳴をはさみながら、列は徐々に短くなっていく。 と、その列が半分ほどになった頃。 「ねえ、ちぇん」 「よんだんだねー?」 順番になったれいむが見張りちぇんを呼んだ。 「あのね、あまあまさんはたくさんもらってもいいの?」 「にゃ?」 このれいむは初日に、実験台になったれいむがスイッチの上で何度も飛び跳ね、あまあまをたくさん出していたことを覚えていた。 「れいむのはにーのまりさは、あのときにつぶれてえいえんにゆっくりしちゃったよ。 れいむのおうちにはおちびちゃんたちがいるよ。れいむはかわいそうなしんぐるまざーなんだよ。 れいむはおちびちゃんたちみんなのぶんのあまあまさんがほしいよ!」 「にゃにゃにゃにゃ!? ちぇんにはわからないよー!」 実を言うと、これは重鎮たちは誰も考えていなかった。 神様のご褒美は時々罰が出ることもあって、その時には永遠にゆっくりしてしまう。 なので、余計なリスクを負ってまでたくさんほしいというものが出るというのは想定外だったのだ。 「ちょ、ちょっとまってほしいよ! おさにきいてくるよー!」 そう言ってちぇんは長の巣目指して跳ねていったが、れいむはそれを待ってはいなかった。 あまあまさんを出してしまえばこっちのもの、そういう短絡的な思考でスイッチに飛び乗った。 「れいむー! おさがいいって……にゃ?」 ちぇんが戻ってくると、れいむはいなかった。 れいむの後ろに並んでいたありすが、顔を青くして震えている。 「ありす、れいむがどこにいったのかおしえてほしいよー?」 「れいむは……」 「……にゃっ!?」 ありすの見る先をちぇんも追うと、そこには体中を穴だらけにしてなお息のあるれいむが転がっていた。 「れいむううううううううううううう!?」 「…どぼぢで……でいぶは…がわいぞうな……じんぐ……まざー…な……に…」 駆け寄ったちぇんに恨み言を残して、れいむは永遠にゆっくりした。 この有様を見ていたゆっくりたちは、理解した。 かわいそうだとかは関係ない、ゆっくりしていないゆっくりは永遠にゆっくりさせられる、と。 もちろんそれは思い込みで、実際は10匹ごとに1匹が淡々と殺されるだけだ。 だが、機械を神様のご褒美と信じているゆっくりたちは、目の前の出来事を関係ありそうなことと結び付けて考えた。 「あ…ありすは、あまあまさんはいいわ。ゆっくりかえるわ…」 とかいはじゃない、とかいはじゃないと繰り返しつぶやきながら、ありすは列を離れて帰っていった。 リスクを考えられる頭の良い個体は、自分が本当にゆっくりできているかに悩み、列を離れていった。 残ったのは、自分がゆっくりできていると信じて疑わないゆっくりばかり。 「ゆぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!」 その後1匹が犠牲になり、都合4匹の犠牲でこの日を終えた。 [7日後] その後も頭の良い個体から列に並ばなくなり、比較的おつむが残念な個体ばかりが列に陣取るようになっていた。 一度にもらえるだけもらっても構わないという長のお達しもあり、その手の個体は死ぬまでスイッチの上で飛び跳ねる。 こうしてこの頃になると列に並ぶゆっくりは片手の指で足りるほどになっていたのだが、この日は様子が違っていた。 いつもの面々に加えて、やけに悲愴な面持ちのゆっくりが混じっているのだ。 「おちびちゃんたち……かならずあまあまさんをもってかえるよ……」 これらは、この機械が原因で親を失い、孤ゆとなった子供たちを引き取ったゆっくりたちだった。 このゆっくりたち自身も子供を抱えており、そこに親類の子供を引き取ったため、餌がとても足りていない。 そのゆっくりできない毎日の慰めに少しでもと、あまあまの列に並んだのだ。 「ゆげえええええええええええええええええええええええええええええええ!!」 「ゆごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 結果は語るまでもない。 ゆっくりは子沢山だ、自身の子供に加えて親類の弧ゆまで引き取れば、10匹を超えるのが当たり前だ。 都合10匹以上もの子ゆっくりに行き渡るように、あまあまを用意しようとすればどうなるか。 こうして数日のうちに、善良だがあまあまの誘惑に抗えない個体が全滅することになる。 [14日後] 「どうだった、おさ?」 「だめね…みんなはなしをきいてくれないわ」 戻ってきた長や参謀、重鎮たちに声をかけたゆっくりたちは、長の返事にうつむいた。 長たちを待っていたのは、群れの弧ゆ院を担当するゆっくりたちだ。 群れの中で弧ゆが爆発的に増加し、弧ゆ院では育てきれなくなったのだ。 その弧ゆたち、総勢100匹あまり。 わずか2匹の弧ゆ院担当ゆっくりで賄いきれるはずもない。 弧ゆ院として用意された大きめな巣穴には収まりきらず、空き家となった巣のいくつかに分散して暮らしている。 それらの巣を順番に回り、世話をするのだが、とても足りない。 ぺーろぺーろでの身繕いは2,3日に1度が精一杯で、餌を届けるだけでほぼ1日が終わってしまうのだ。 その、餌の問題のほうが遥かに深刻だ。 2週間前、弧ゆ院の子供たちは10匹もいなかった。 それが、たったこれだけの間に群れの成ゆが半減し、弧ゆが10倍となる事態となったのだ。 単純に考えて、狩り手が半減したのだから、群れ全体の集める餌の量も半減している。 だが、すっきり制限のおかげで、孤ゆの数は幸い100匹で済んでいるとも言え、今なら群れ全体の協力で支えられないこともない。 しかし、長たちによる説得は失敗に終わった。 長たちの命令に従順な善良個体は、このときすでに全滅に近い状態だった。 残っているのは、ご褒美のあまあまに通い続ける極わずかな生き残りと、早々にあまあまを諦めた比較的頭の良い個体たちだ。 まず、あまあまに通い続ける個体たち。 これはダメだ、端から当てには出来ない。 すでに味覚があまあまで破壊されており、以前にはご馳走だったおはなさんやいもむしさんさえ受け付けなくなっているという。 また、あまあまへの中毒症状も出ており、性格も攻撃的になっていて、群れでの生活に支障が出ている。 数少ない例外が、あの最初に自分からあまあまを取りに行ったまりさだったが、先日とうとう永遠にゆっくりさせられてしまった。 彼女らがあまあまに通い続ける限り、いずれ同じように永遠にゆっくりしてしまうだろう。 そして比較的頭の良い個体たちだが、これらが実に始末が悪い。 そもそも彼女らがあまあまを諦めたのは、ゆっくりしていないゆっくりは永遠にゆっくりさせられる、という思い込みからだ。 つまり彼女らには、自分がゆっくりしていないゆっくりだという自覚が、多少なりともある。 自己中心的な、あからさまに言ってしまえばゲスの素養があるゆっくりだと、彼女らはこの時に自分で認めてしまったのだ。 それからというもの、彼女らは徹底的に保身に走っている。 今のこの現状を予測できたものも少なくないのだろう、彼女らは決して身内の弧ゆを引き取らず、自分の子供だけを養ってきた。 そしてまだ秋も始まったばかりだというのに、今冬篭りをはじめても十分なほどの食料を溜め込んでいた。 当然、その食料は長たちには秘密だ。 その上で、冬篭りが出来なくなると、弧ゆたちへの援助を求める長の要求を跳ね除けた。 「おさ、けつだんしないといけないわ」 「でも……でも、ぱちぇ!」 「むきゅ、わたしだってつらいわ。でも、このままだとみんな、ふゆをこせないわ」 参謀ぱちゅりーが長に迫っているのは、間引きだ。 今は長と参謀が弧ゆの世話を手伝い、重鎮たちが狩りに奔走することで辛うじて食い繋いでいる。 だが、冬に備えての蓄えとなると絶望的だ。 日ごろのわずかな備蓄自体、弧ゆの急増のために吐き出してしまったのだ。 参謀ぱちゅりーの言うこともわかる。 長ありすは群れの長の子として生まれ、先代の長ありすから徹底的に長の心構えを叩き込まれてきた。 その教えの中には、大を生かすために小を捨てるというものもある。 だが、長ありすにとっては群れのみんなは全て家族で、それを切り捨てることなど今まで考えたこともなかったのだ。 「…ひとつだけ、かんがえがあるわ」 声を上げたのは、群れのみんなにご褒美のあまあまに並ぶことを許したとき、ルールをひとつ加えた重鎮ぱちゅりーだった。 今ではあまあまに通うゆっくりが減ったため、監視もルールも無くなっていた。 が、次の参謀と目されている重鎮ぱちゅりーの発言に、皆が注目した。 「そ、そんなことできるわけないでしょおおおおおおおおおおおおお!?」 「ぱちゅりーのいってることがわからないよーーー!!」 「でも、ぱちゅりーにはこれくらいしか、みんながふゆをこせるほうほうはおもいつかないわ」 「ゆーーーーん……」 「……やるわ」 「おさ!?」 「みんながえいえんにゆっくりしないですむなら、それをやりましょう」 [15日目] 夜まで続いた会議の翌日、長ありすの群れから重鎮ちぇんが跳ねて行った。 向かう先は、神様のご褒美をはさんで群れの反対側、この森で2番目に大きい──今では最大の群れだ。 「ちぇんはとなりのむれのちぇんだよ! おさにあわせてほしいよ!」 その声に、この群れのゆっくりたちが集まってきた。 ちぇんを囲んで遠巻きに集まり、特に近寄って来ようとはしない。 ひそひそと何事か話しながら眺められることに居心地の悪さを感じながら待っていると、その壁を割って1匹のまりさが現れた。 「まりさのむれになんのようなのぜ?」 「ちぇんのおさから、おくりものをしにきたんだよー」 そのちぇんの言葉に長まりさが眉をひそめる。 隣の群れとは餌場を巡って対立することが多く、こんな贈り物の申し出など今までに無かったからだ。 「じつは、ちぇんのむれにたいへんなことがあったんだよー」 「たいへんなこと?」 ちぇんは参謀ぱちゅりーに教わったことを思い出しながら話していた。 曰く、隣の群れの長は疑い深いから、まずこちらの弱みを話して、それに対するお願いということにしろと。 そのためにみんなで考えた言葉を、長まりさの態度に注意しながら一つ一つ話していった。 「そうなんだよー。 はぐれれみりゃがやってきて、むれのみんながたくさん、えいえんにゆっくりしちゃったんだねー」 ここで長まりさがにやりと笑う。 隣の群れの勢いが弱まったのなら、この秋は餌場を拡大することが出来る。 今年の冬は楽に越せそうだ、と。 「それでおねがいがあるんだよー。 おとなのみんなはへっちゃったけど、こどもはたくさんいるからたいへんなんだねー。 だから、ちぇんたちのむーしゃむーしゃぽいんとにはこないでほしいよー」 「ゆ? それはできないそうだんなのぜ! まりさたちだって、ふゆさんをこすのはたいへんなのぜ! ごはんさんはあるところからとるんだぜ! ひつようだったらちからずくなのぜ!」 「ただとはいわないよー。そのためのおくりものなんだねー」 そのちぇんの台詞を長まりさが鼻で笑い飛ばす。 「ゆっはっは! おもしろいことをいうのぜ! ちぇんがどこにおくりものをもってるのか、まりささまにはみえないのぜ!」 「ここにはないんだよー。あんないするからついてきてほしいんだよー」 罠かもしれない、そう構えた長まりさだったが、道々ちぇんの話を聞くうちに、見るだけ見てみようという気持ちになった。 何でも、ゆっくりの神様がご褒美にくれたあまあまだという。 ただあまあまさんを出すだけでなく、時々罰があるというのが気に入らないが。 ともかく、本当にあまあまだったら、ちぇんたちの群れのいうことを聞いてやってもいい。 あまあまがあればゆっくり出来る、つらい冬篭りを楽しく過ごせるかもしれない。 「これなんだよー」 ちょうど、長ありすと長まりさのそれぞれの群れの真ん中辺りに、それはあった。 ここに置かれたのはお兄さんの計算ずくなのだが、それについては今は触れない。 銀色にぴかぴかしたそれは、普通の森の中にあるものではない。 長まりさが街に出たことがあれば、人間の実物などを見て、これが人間に関係するものと気付けたかもしれない。 だが、生まれてからずっとこの森で過ごしてきた長まりさには、この見たことの無いものが神様のものだと信じてしまった。 「こうするとあまあまさんがでてくるんだよー」 そう言ってちぇんが平らな部分に飛び乗ると、小さな丸いものが出てきた。 ちぇんはそれを長まりさの前においた。 「これがあまあまさんだよー。ぺーろぺーろしてみてほしいよー」 「ゆん、どれどれ。 ぺーろぺーろ……ししししあわせえええええええええええええええ!!!」 「むーしゃむーしゃすると、かたくてゆっくりできないんだよー。 おくちにいれてぺーろぺーろしてるといいんだよー」 「むぐむぐ、んぐ……ふぃあふぁふぇええええええええええええええええ!!!」 一心不乱にあまあまを食べる長まりさの反応に、ついて来た取り巻きたちが驚いている。 そして、自分も食べたいと、物欲しそうな顔を長まりさに向け始めた。 「ゆぐん、しあわせー!!だったのぜ!! みんなもたべるといいのぜ!!」 「ちょっとまってほしいよ!!」 長まりさの言葉で機械に取り付こうとしたゆっくりたちが、一斉に不機嫌な目をちぇんに向ける。 自分の言葉を止められた長まりさも同じだ。 だが、これは参謀ぱちゅりーに特に言われたことなので、ちぇんも言わないわけにはいかなかった。 「そのあまあまさんは、ときどきばつがあってえいえんにゆっくりすることがあるんだよ。 それはおぼえておいてほしいよー」 「それはさっききいたのぜ!」 「じゃあ、このあまあまさんはまりさたちのものなんだよー。 ちぇんたちのおねがいもきいてほしいよー」 「ああもうわかったのぜ! むーしゃむーしゃぽいんとはいまのままでいいのぜ! まりさたちはあまあまでいそがしいからさっさとかえるんだぜ!!」 「というかんじだったんだよー」 「むきゅ。ありがとう、ちぇん。おつかれさま」 群れに戻ってきたちぇんを出迎え、一通り話を聞いてから参謀ぱちゅりーはねぎらいの言葉をかけた。 隣の群れの長まりさの反応は、大体ぱちゅりーたちが予想したとおりだった。 「でも、わからないよー」 「どうしたの、ちぇん?」 「となりのおさは、こわいけどかしこいんだよー。ほんとうのことにきづくかもしれないんだよー。 ちぇんたちのむれにせめてこないか、しんぱいなんだよー」 ちぇんの心配とは、長ありすの群れが激減した原因がご褒美のあまあまだと、隣の群れに気付かれるかもしれないということだ。 そのときに罠にはめた報復をされるのでは、と恐れているのだ。 「むきゅ、それはしんぱいないとおもうわ」 「にゃ? どういうことなのかおしえてほしいよー」 「となりのおさがかしこいからよ」 [20日目] 長まりさは満足していた。 こんな素晴らしいあまあまをもらえるまりさは、きっと特別な存在なのだと感じていた。 隣の群れの後というのが気に入らないが、それも大したことではない。 どうせ隣の群れは、神様のご褒美を使いこなせなかったのだろう、その程度なのだ。 「ゆん! さっさとくるのぜ!」 「いやああああああぁぁぁぁぁぁぁ…」 長まりさと取り巻きたちに、1匹のありすが連れられてきた。 このありすは群れの掟を破って、群れ以外のゆっくりとすっきりしようとしたのだ。 「ごべんだざいぃぃ、もうじばぜんんん…ゆるじでぐだざいいいいぃぃぃぃぃぃ…」 この群れで罰を受けるということは、すなわち永遠にゆっくりするということだった。 そのため、ありすは自身の末路を悟りながらも命乞いを続けていた。 「ゆふん、まりささまのいうことがきけるなら、ゆるしてやってもいいのぜ!」 「ゆ?」 「まりささまがいいというまで、あそこではねることができたら、ついほうだけでゆるしてやるのぜ!」 「ゆぅ…もうすぐふゆさんがくるのに、ついほうされたらゆっくりできなくなっちゃうわ…」 「ゆあーん!? ばつをうけたいというなら、まりささまはかまわないんだぜ!!」 「ゆぴいいいいぃぃぃぃぃ!! やりばずうううぅぅ!! だがらだずげでぐだざいいいいいい!!」 長まりさに凄まれたありすは、泣きながらスイッチに飛び乗った。 何か出てきたが、今はそんなものを気にしている場合ではない。 こんなところで跳ねるだけで命が助かるなら、いくらでも跳ねる。 だからありすは長の合図も待たずに飛び跳ね始めた。 「ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ! っゆぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 ありすが飛び跳ねていた場所は、ご褒美のスイッチの上だった。 長まりさは、群れの罪ゆっくりの処刑をここで行うことにしたのだ。 長まりさの群れでは恐怖政治が敷かれている。 群れの勃興期には見せしめの処刑を頻繁に行っていたが、それも群れの規模が大きくなりすぎた今では逆効果だった。 締め付けすぎると、その分反発も強力になるからだ。 そのため、処刑は取り巻きたちだけで密室で行っていたが、これがなかなかに手間がかかる。 動けない程度に痛めつけてから群れから離れた穴に閉じ込め、誰も助けに来ないように死ぬまで見張るのだ。 直接手を下してしまっては、死臭が体についてゆっくり出来なくなる。 だからこんな手順を踏んでいたが、面倒なので別の方法を考えていた。 そこに、神様のご褒美がやってきた。 罪ゆを簡単に処分できる上にあまあままでもらえる、まさに一石二鳥のご褒美だった。 中から出てきたあまあまは、1個ずつ取り巻きに分け、残りは長まりさの分となる。 初めての日に取り巻きが1匹、永遠にゆっくりしてしまったが、今となってはそれもいい教訓だ。 取り巻きの誰もがこのやり方に文句を言わず、1匹でこっそりあまあまを取りに来ようとすることもない。 群れの一般のゆっくりには、神様のご褒美のことは教えていない。 元々、特別なご馳走が手に入っても長まりさの総取りだったので、ちぇんの話をきいたゆっくりたちも気に留めていない。 知っている取り巻きたちは、今のやり方で十分に満足している。 長まりさも、全てがうまくいっていることに満足だった。 だから長まりさは気付かなかった。 あまあま欲しさに微罪で罰せられるゆっくりが増えていたことに。 物陰で様子を伺っている視線があることに。 「…ゆ、いったよ」 物陰の視線は、長ありすの群れの重鎮まりさだった。 その後ろには重鎮みょんと重鎮ちぇんの姿もある。 3匹の視線の先には、隣の群れの長まりさ一行がいる。 あまあまを手にして帰っていくところで、もう少し待つと完全に見えなくなった。 茂みの陰から姿を現した3匹は、それぞれ朴の木の落ち葉をくわえている。 向かった先は処刑されたありすの死骸。 持ってきた落ち葉をその隣に重ねると、ありすの死骸を落ち葉の上に乗せた。 「じゃあ、さいしょはまりさとみょんがはこぶよ」 「わかったみょん」 「ちぇんはみちをみるんだね。わかるよー」 そうして3匹は、ありすの死骸を運んでいった。 弧ゆたちの食料にするためだ。 当然、同属食いの禁忌はこの群れの中にもある。 だが、何にでも例外はある。 過去に群れが飢餓に陥ったとき、餓死した仲間の死骸を食らって生き延び、そこから再興して今の群れがある。 長も参謀も重鎮たちも、そのことは代々引き継ぎ、群れの歴史として知っているのだ。 だから重鎮ぱちゅりーは、この非常時を乗り切るために提案したのだ。 群れの中から死骸を出すのは抵抗があるし、何よりこれ以上の死ゆは出したくない。 ならば、他の群れから死骸を調達すればよいのでは? さすがに死骸をくれなどと真正直に話しては、群れ全体がゆっくり出来ないとして敬遠されてしまう。 だから、神様のご褒美を隣の群れに送ったのだ。 きっと隣の群れでもあまあまに目がくらんで、死ゆを出してでも手に入れようとするだろう。 その死骸を、こっそり頂戴するわけだ。 惨めだなどと嘆いている場合ではない、100匹もの弧ゆの命がかかっているのだ。 もちろん同属1体分のあまあまなど、100匹の弧ゆの前には焼け石に水だ。 なので、これは普段なら食べないような美味しくない草さんに混ぜて出される。 これは不要に舌を肥えさせないためでもあるが、死骸を死骸と思わせないための処理と、少ない餌を可能な限り補うことも兼ねている。 今も他の重鎮たちが、手伝ってくれない群れの仲間の代わりに、必死になって狩りをしているのだ。 正直なところ、このままではまともに冬を越せる個体は少ないだろう。 それでも、まともな成ゆが壊滅状態の長ありすの群れでは、次代のために弧ゆたちの命を諦めるわけにはいかないのだった。 [25日目] 「ゆっくりできないおさはでていってね!」 「ゆっくりできないおさはでていってね!」 長ありすは窮地に陥っていた。 群れのゆっくりに、死骸を集めていることを知られてしまったのだ。 群れで生き残った頭の良いのゆっくりたちは、豊かな餌場を少ないゆっくりで独占しているうちに、完全にゲスとなっていた。 冬の蓄えをたっぷりと溜め込んだ上での日々のたっぷりの餌に、我慢することをどんどん忘れていった。 また、長たちも弧ゆのために日々奔走しており、誰もそれを正すことが無かった。 そしてある日、あるゆっくりが、長たちが何か隠していることに気付いた。 思えばあれほどの数の弧ゆが、誰も永遠にゆっくりすることなく育っている。 長たちはとてもゆっくりした餌場を、自分たちに秘密にしているのでは? そう勘繰ったのだ。 そして、見たものは死骸をあさる重鎮たち。 ゆっくりを食べるゆっくりはゲスだ、ゆっくりしていない。 だからあの弧ゆたちは全部ゲスだ。 ゲスを育てる長たちもゲスだ。 ゲスは群れにいらない、出て行け。 そういうことだ。 長たちはぱちゅりー種まで含めても10匹ほどで、弧ゆたちのための重労働で疲れきり、栄養状態も悪い。 対して群れのゆっくりは、ぱちゅりー種を除いても20匹あまりで、長たちより一回りも大きいほど肥えていた。 群れのゆっくりの子ゆまで含めれば数は圧倒的で、一斉に襲い掛かられては弧ゆも含めて全滅は必至だった。 「…いきましょう、おさ」 「ゆぐっ…ゆうううぅぅぅぅぅぅ……」 父祖の地を追われる長の心境、如何ばかりか。 長ありす以下、重鎮・弧ゆを合わせて総勢100匹以上。 この日、あても無く群れを去っていった。 [27日目] 「どういうことなんだぜえええええええええええ!?」 神様のご褒美の前で、隣の群れの長まりさが激昂していた。 罪ゆを処刑したのに、あまあまが出てこないのだ。 何かの間違いと思った長まりさは、立て続けに3匹を処刑した。 だが、あまあまは全く出てこなかった。 この日、ついに機械の中の飴玉が尽きたのだ。 「どういうことなの、おさ!」 「ありすもあまあまさんがほしいわ!」 取り巻きたちが騒いでいるが、無いものはどうしようもない。 長の巣にためてあるあまあまを使うか? いや、あれはダメだ、あれは冬篭りの間に長のかわいいおちびちゃんたちが食べるのだ。 だが、このままでは取り巻きたちの収まりが付かない。 どうすれば。 「…となりのむれがわるいんだぜ!!」 「「「ゆ!?」」」 短い時間で必死に考え、長は隣の群れに転嫁することを選んだ。 「このごほうびは、さいしょとなりのむれがつかっていたのぜ!! やつらがつかわなければ、あまあまがでなくなったりしなかったはずなのぜ!」 「ゆーん、そういうものなのかしら?」 「そうにきまってるのぜ! となりのむれがまりささまたちのぶんのあまあまをたべたのがわるいんだぜ!!」 「ゆ、なんだかそんなきがするよ!!」 「だからとなりのむれをせいさいしにいくんだぜ!!」 「「「ゆ゛!!?」」」 勢いに乗りすぎた長まりさがとんでもないことを言い出した。 今まで隣の群れとは小競り合いはあっても、全面戦争にまで発展したことは無い。 長まりさの周りで安穏と暮らしていた取り巻きたちは、自分に危害が及ぶようなことを経験したことが無い。 だから、自分が死ぬことがあるかもしれない事態に驚いた。 「お、おさ! れいむはあまあまさんはいらないから、せいさいはかんがえなおしてほしいよ!」 「ゆぁーーーん!? れいむはとなりのむれのすぱいなのかぜ!?」 「ぢぢぢぢがうでじょおおおおおおお!? せいさいはれいむがゆっくりできないからやりたくないよおおおおお!!」 「うるさいうるさい!! やるといったらまりささまはやるのぜ!! げすのむれはねだやしにするのぜ!! いますぐもどってせんそうのじゅんびをするのぜ!!」 踵を返して群れに戻ろうとする長まりさの後姿を、取り巻きたちは暗澹たる思いで見ていた。 元々取り巻きたちは、長の周りで調子のいいことを言っているだけでゆっくりできるので、そうしていただけだ。 それが、本当に戦争になってしまったらゆっくりどころではない。 実際には元長ありすの群れはすでに群れとして機能していないので、一方的な蹂躙で終わるだろうが、それを長まりさの群れが知る由は無い。 どうやって群れから逃げ出そうか、何を持って逃げ出そうか、どこへ逃げていこうか。 顔を真っ赤にした長の後ろで取り巻きたちが顔を青くしているとき。 「まつんだよ!!」 「ゆぅーーーん?」 長まりさ一行の前に、1匹のゆっくりが立ちふさがった。 厳しい目をした、長とは別の若いまりさだった。 「どうしてかってにこんなところにくるのぜ! せいさいされたくなかったらさっさとむれにかえるんだぜ!!」 「まりさはしっているよ! おさたちがここで、みんなをあまあまにかえていたことを!」 「それがどうしたのぜ! ざいゆっくりはせいさいされてとうぜんなのぜ!! ついでにあまあまがでてきても、かんけいないのぜ!!」 「じゃあ、きょうえいえんにゆっくりしたありすはなにをしたの!? きのうえいえんにゆっくりしたれいむは!? そのまえのぱちゅりーは!?」 「ゆぎっ!?」 長まりさは咄嗟の言葉に詰まった。 ここ数日はあまあま欲しさに、ほとんど言いがかりで罪ゆを仕立て上げていたからだ。 「ぱちゅりーはまりさのおかあさんだったよ! とってもかしこくてゆっくりしたおかあさんだったよ! れいむはまりさのいいなずけだったよ! とってもやさしくてゆっくりしたれいむだったよ! ありすだって……それを…それををををををををををを!!」 「ゆがああああああああああああああああああ!! うるさいうるさい!! まりささまはおさなのぜ!! えらいのぜ!! おさにさからうげすはしねええええええええええええ!!」 言うが早いか、長まりさが目の前の若まりさに飛び掛る。 だが、若まりさはそれを冷静に避けると声を上げた。 「いまだよ!」 「ゆん!?」 長まりさは横から飛び出してきた影に気付いた。 気付いたが、そこまでだった。 「ゆっくりしねみょん!!」 ざくっ 「ゆっぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 横の木陰に潜んでいたみょんが口にした木の枝で、長まりさは貫かれた。 「ゆばあああああああああああ!! だれがばりざざばをだずげろおおおおおおおおおおお!!」 「むりだよ」 「ゆ!? ゆびゃあああああああああああああ!! いぢゃいいぢゃい!! おずなあああああああああああ!!」 枝に貫かれたままの体を若まりさに押され、長まりさは悲鳴を上げる。 そうして無理矢理後ろを向かされて、目に入ったのは木の枝で武装したゆっくりに囲まれた取り巻きたちだった。 「だ…だずげで……おざ…」 「ゆああああああああああああああああ!! おばえらがばりざざばをだずげるんでじょおおおおおおお!? ばがなの!? じぬの!?」 「しぬのはおまえだよ」 「ゆ゛っ!?」 若まりさは長まりさから枝を引き抜くと、長まりさの上に飛び乗った。 「ゆぴゃあああああああああああああああああああああ!! でぢゃう!! あんごでぢゃう!! やべで!! だずげでええええええええ!!」 「いのちごいなんてきかないよ」 「どぼぢで!?」 「どうしてそんなこときくの? ばかなの? しぬの?」 「ばりざはばがじゃな……ゆぎょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! 若まりさは何度も長まりさの上で飛び跳ね、念入りに押し潰していった。 やがて長まりさの声が聞こえなくなり、目玉も潰れて真っ平らになり、土に混じって原形を留めなくなるまで、何度も、何度も。 「おまえたちはむれにつれてかえるよ」 「おでがい…いのぢだげば……」 「おまえたちのしょけいは、むれのみんなでするよ」 「「「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」」」 [30日後] 隣の群れあたらしい長となった若まりさは、長ありすが統治していた群れを訪れた。 長まりさの苛烈な統治で半減してしまった群れの安堵を担保するために、平和条約を結ぶためだ。 そして、隣の群れの現状を見て愕然とした。 これ程広大なゆっくりぷれいすに、いるのはわずかに十数の家族だけで、その誰も彼もがゲスだった。 聞けば、長たちはゲスが追い出したという。 賢く立派な長がいると評判で、いつか移り住みたいと思っていた若まりさの理想郷の、現実がこれだった。 ゆっくりの群れなんて、どこもこうなのかもしれない。 長まりさに家族の全てを奪われた若まりさは、復讐を終え、理想の結末を見、全てが空しくなった。 こうして、隣の群れはわずか3日で新しい長を失った。 この後、統率を失ったゆっくりたちが餌場を巡って散発的に争っていたが、やがて来た冬が全てを雪の白の下に包み隠してしまった。 いずれ来る春に新しい秩序が生まれるかは、その時にならないとわからない。 [後日] 「いや、なかなかドラマチックだったね」 観察記録の編集を終えた俺は、ため息混じりにつぶやいた。 もちろん、満足満腹のため息だ。 2つの群れの中央に機械を置いたのは、機械を巡って群れ同士が醜い争いでもしてくれないかと期待してのことだった。 だが、現実は俺の予想をはるかに超えて劇的だった。 こんなおもしろいものを俺一人で見るのはつまらない。 最近、愛で兄が虐待に目覚めたので、これを見せて反応を見てみよう。 愛でと虐、どちらに振れるかはわからないが、どっちにしても面白いだろう。 面白いといえば。 モニタの画像を切り替える。 赤外線カメラの白黒画像に映っているのは、長ありすとその御一行様だ。 裏手の広大な森は、人里近いにもかかわらず純野生種に極めて近いゆっくりを観察できる、貴重な土地だ。 そこであれほど大きな群れを維持できた長ありすを使い捨てるのはもったいない。 以前別の実験のために誰も住まなくなってしまったゆっくりぷれいすに、人間の仕業と気付かれないように誘導したのだ。 長ありすたちは、かつて熊の巣穴だった場所で冬篭りをしている。 かつての主は、猟友会の手にかかってすでにこの世にはいない。 巣穴の置くにはたっぷりの餌が溜め込んである。 数年は放置されていたゆっくりぷれいすなので、餌だけはたっぷりと集めることができたのだ。 当然、それだけでは100匹以上の群れを維持できない。 なので、森に仕掛けたあれこれの罠を使い、適正と思える数にまで俺が間引いた。 新作の罠の動作確認にもなり、一石二鳥だった。 長たち大人のゆっくりの輪の中で、30匹ほどの子ゆっくりが眠っている。 全てが冬を越せないとしても、これだけの数がいれば、春には新しい群れとして機能し始めるだろう。 その新しい群れは、一体どんなドラマを見せてくれるのだろう。 来るべきその時のために、新作の開発に余念は無い。 (完) 作者:元ネタ → 「98%の確率でお金がもらえるが、2%で死ぬボタン」 (記事:ttp //internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20090916_315857.html) 作者は898万円で死にました。 by (め)の人 想定以上に長くなったので、せっかくなので拙作一覧もつけておきますね。 ふたば系ゆっくりいじめ 166 ゆっくり繁殖していってね! ふたば系ゆっくりいじめ 179 にんげんさんはゆっくりできない ふたば系ゆっくりいじめ 203 まりさのだいじな ふたば系ゆっくりいじめ 207 ゆっくりせいいをみせてね! ふたば系ゆっくりいじめ 215 ゆっくりほいほい ふたば系ゆっくりいじめ 219 ゆっくりアップダウン ふたば系ゆっくりいじめ 244 ぽんぽんいたいよ ふたば系ゆっくりいじめ 251 ゆゾンデートル ふたば系ゆっくりいじめ 255 れいむのラッキーライフ ふたば系ゆっくりいじめ 259 れいむのアンラッキーライフ ふたば系ゆっくりいじめ 262 目と目で通じあう ふたば系ゆっくりいじめ 269 約束しよう ふたば系ゆっくりいじめ 278 れいむの性格改善教室 めーりんあきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 最高の作品の1つに出会えた -- 2012-11-19 01 41 10 俺1億5000万超えた! -- 2011-05-30 20 15 12 物語性が素晴らしいなぁ。 仕掛けも良いが、その後のゆっくり達の考えも素晴らしい -- 2010-10-03 22 05 02 すごく完成度が高くてゆっくりできたよ! こういう読み応えがある作品はうれしいね! -- 2010-07-31 09 05 47 面白かった! こういうのを読みたかった -- 2010-07-11 12 10 34 フォローは『あの向こうへ』をどうぞ -- 2010-03-07 02 18 18
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「ふたば系ゆっくりいじめ 764 たまたま/コメントログ」 面白かった。偶然が重なったとはいえ、ゆっくりんピースのうざいところを潰せるのは面白い -- 2010-03-26 18 36 26 所詮偽善者の集まりだからな。ちょっと突けば本性なんてこんなもんだ -- 2010-06-29 00 09 07 ゆっくりんぴーす虐めってジャンルはないのかな? -- 2010-07-03 16 10 38 金と権力に品性が伴ってない人たちってたくさんいるよね。セレブ(笑) -- 2010-07-03 19 25 35 ゆっくりんピースざまぁwwww ゆっくりんピース苛め物もっと欲しいねぇ -- 2010-11-01 19 33 52 「たまたま」なら仕方ないな -- 2011-09-01 05 43 20 レイパーを駆除したって別に問題じゃないだろ。 ハムスターの飼い主だってネズミ駆除くらいはする。 -- 2013-08-07 09 53 47 「たまたま」だしね「たまたま」 -- 2016-01-08 23 31 20 愛誤団体ざまぁwwwwww -- 2019-03-30 01 14 40
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ゆんごく 18KB 虐待 制裁 愛護 飾り 野良ゆ 都会 現代 作者迷走中 ※オレ設定 ゆんごく とある街角、一人の人間が道を歩いていた。 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・」 と、泣き声が聞こえてきた。 人間は、鳴き声の方を向いた。 そこには、ピンポン玉サイズの赤れいむがいた。 この赤れいむ、どうやら飾りとなっているリボンがないようだ。 「おきゃあしゃん・・・どきょなにょ・・・・」 「おとうしゃん・・・れいみゅはきょきょにいりゅよ・・・」 「おねえしゃんたち・・・きゃくれちぇないででちぇきちぇね・・・」 どうやら、家族とはぐれた野良ゆっくりの子供のようだ。 『おい、どうしたんだ?』 人間は、飾りのない赤れいむに話しかけた。 「にんげんしゃん!!!れいみゅのかじょきゅがいにゃくにゃっちゃにょ!!!」 「いっしょにさがちてにぇ!!!」 と、人間に馴れ馴れしく返すれいむ。 『う~ん、どこにも家族はいないようだぞ・・・どうやら・・・探すのはムリかもな。』 野良ゆっくりは、駆除対象になるため、 害虫扱いしている人間が多数いるこの世界で、 野良ゆっくりに、自ら話しかけるところを見ると、奇特な性格であるだろう。 人間は、辺りを見回した。 この街には、数え切れないほどの野良ゆっくりがいる。 その中で、この赤れいむの家族を探すなんて、まず不可能である。 『おい、お前、家はどこだ?もしかすると、お前の家族は家に帰っているかもしれないぞ?』 人間は、優しく赤れいむに話しかける。 「おうちにゃんちぇ・・・にゃいよ・・・れいみゅたちはゆっくちぷれいしゅをさがちてちゃんだきゃら・・・」 どうやら、住む場所を探しに移動していた野良ゆっくりらしく、 その間に、はぐれたようだ。 『とりあえず、あれだ。もう見つからないだろうな。お前の家族は。』 「しょんにゃあぁっぁぁぁああああ!!!!ゆんやぁっぁぁあぁぁあ!!!!」 赤れいむは、激しく泣き続けた。 人間は困った顔をした後、赤れいむに話しかけた。 『仕方がない、俺のウチに来るか?』 「ゆっ!?」 どうやら、人間の話すことを理解できないようだ。 しばらくして、人間に連れられて、飾りのない赤れいむは、 人間の家にやってきた。 「ひりょいよ~!!!ゆっくちできりゅよ!!!」 先ほどまで家族とはぐれ、ゆんゆんと泣いていたれいむであったが、 家に入ると、ピョンピョンと飛び跳ねて、喜んでいた。 『なんか食うか?』 「ゆぅ・・・あみゃあみゃしゃんがたべちゃいよ・・・」 人間は、赤れいむの前に板チョコを置いた。 「あみゃあみゃしゃん!!!!」 目をキラキラとさせて、涎を垂らす赤れいむ。 『食べていいぞ。』 「む~ちゃむ~ちゃ、しあわちぇ!!!!!!」 張り裂けんばかりの声で叫ぶ赤れいむ。 『そうか、それはよかった。』 人間は、ニッコリと笑い、赤れいむを見つめた。 「にんげんしゃん!!!ありがちょう!!!!」 赤れいむは、腰(があるのかわからないが)をくの字に曲げ、 丁寧にお辞儀をした。 それから一週間、人間と飾りのない赤れいむは、 とてもゆっくりした日々を過ごした。 毎日、板チョコを人間からもらう赤れいむ。 赤れいむは、人間にお礼をするため、とてもゆっくりした歌を歌った。 『れいむ、お前、歌が上手いな。』 「にんげんしゃん!!!ゆっくちちちぇいっちぇね!!!!」 れいむもまた、満面の笑みで、人間を見つめる。 れいむは、すごくゆっくりした日々を過ごし、 野良生活をしていたあの頃のことは、忘れたかのように見えた。 事実、れいむは、忘れていた。 人間と暮らすうちに、自分がとてもゆっくりできる天国、 ゆんごくにいるのだと、錯覚していた。 そんなある日・・・ 「おちびちゃん!!!さがしたんだぜ!!!」 泥にまみれた汚いまりさがベランダにいた。 何か腐ったような匂いがする。 さらに、見れば見るほど、悪人面のニヤケ顔。 醜悪すぎる。 「れいむのかわいいおちびちゃんんん!!!ゆっくりしていってね!!!」 同じく薄汚れたれいむが、涙と涎を撒き散らして、ゆひぃゆひぃと叫んでいる。 その様は、糞が小便をブチ撒いている。そんな表現が最も似合うといっても過言ではない。 「ゆー!!!きょきょがまりちゃのゆっくちぷれいしゅになるんだじぇ!!!」 「れいみゅもあみゃあみゃしゃんがたべちゃいよ!!!」 「おい!!!くしょどりぇい!!!きゃわいいまりしゃにあみゃあみゃしゃんをもっちぇこい!!!」 「れいみゅにももっちぇこい!!!くじゅはきりゃいだよ!!!」 赤れいむ2匹に赤まりさ2匹。 どうやら、人間のことを奴隷か何かと勘違いしている子供たち。 こいつらは、まさにゲスだろう。 「みんにゃぁぁぁあ!!!ゆっくちちちぇいっちぇね!!!!」 飾りのない赤れいむは、涙を流しながら、家族と思われるゆっくりたちに挨拶をした。 「「ゆっくりしていってね!!!」」 親と思われるれいむとまりさは、歯茎を露出し、意地汚なそうな笑顔で、挨拶し返した。 「ゆゆっ!!!きょきょにゆっくちできにゃいゆっくちがいるんだじぇ!!!」 「ゆひゅん!!!れいみゅがしぇーしゃいしゅるよ!!!」 「ゆゆゆっ!!!きょのゆっくちできにゃゆっくちはきょのみゃえまでまりしゃたちといっしょにいちゃよ?」 「ゆぅぅうう!!!ちねぇぇぇええ!!!ゆっくちできにゃいゆっくちはちねぇえええ!!!」 子供たちは、飾りのない赤れいむに威嚇している。 「ゆぅ・・・みんにゃ・・・どぼちで・・・じょんにゃごちょ・・・いうにょ・・・」 赤れいむは、涙を浮かべて、哀しそうな表情を浮かべた。 『何か用か?』 人間は、ベランダにいる汚い異臭を放つ野良ゆっくりたちに話しかけた。 「にんげんさん!!!そのおちびちゃんはれいむとまりさのおちびちゃんなんだぜ!!!」 「たすけてくれてありがとう!!!にんげんさん!!!」 れいむとまりさは、出来の悪い営業スマイルで、相も変わらず、歯茎を露出して、 体をクネクネとさせて、気持ちが悪い。 「ちゃまちゃまとおりきゃきゃっちゃらみちゅけちゃのじぇ!!!」 「ゆっくちできにゃいゆっくちのくちぇにゆっくちちてるのをみちゃときにはれいみゅはおこっちゃよ!!!」 「でも!!!まりしゃたちがゆっくちできにゃいゆっくちのかじょくだっちぇいえばゆっくちさせちぇくれるよ!!!」 「おきゃあしゃんとおとうしゃんはてんしゃいだね!!!こんにゃあいでぃあをおもいちゅくにゃんちぇ!!!」 ピョンピョンと飛び跳ねる子供たち。 口々に、心で思っていることを暴露する。 『で?』 呆れた顔をした人間。 「おれいにれいむとまりさとここにいるおちびちゃんたちをかうぎむをあたえるんだぜ!!!」 「にんげんさん!!!ゆっくりしないではやくれいむたちをゆっくりぷれいすにいれてね!!!」 してやったり、という表情の二匹。 もはや、醜悪を通り越して、ある意味、美しすぎるほどの愚かさと汚さ。 「あにょゆっくちできにゃいゆっくちははやきゅでていくのじぇ!!!」 「きょきょはれいみゅのゆっくちぷれいしゅだよ!!!」 「ゆっくちできにゃいゆっくちはゆっくちちね!!!」 「♪ゆゆゆ~ゆっくちちね~」 この親あれば、この子ありか。 1000回は殺しておかないと気がすまないほどのゲス加減。 『断る。』 人間は無表情で言った。 「どぼぢでことわるんだぜぇぇぇえええ!!!まりさたちをゆっくりさせろ!!!」 「じねぇぇぇぇええ!!!ぐずはじねぇぇぇええ!!!いまずぐじねぇぇぇえ!!!」 れいむとまりさは、さきほどの営業スマイルから、一転、怒声を喚き散らした。 『お前らは、この飾りのないれいむがゆっくりできないからと言って、 捨てたが、たまたま通りかかったオレの家を見た時、ゆっくりしている姿を見て、 一瞬、ムカついたが、よく考えると、家族と名乗りだして、お礼に自分たちも、 飼ってもらおうとした意地汚いクソ袋だ。 そんなヤツらは、加工所に送ってやる。』 人間は、野良ゆっくりたちをにらみ付けた。 「どぼぢでばでぃざのがんがえがばれでるのぉぉおぉおぉ!!」 「ゆんやぁぁぁぁぁぁああ!!!!にんげんざんばでいぶだじのげいがぐをどうじでじっでるのぉぉぉお!!!」 さも、驚いたかのような顔をするれいむとまりさ。 「ゆんやぁぁぁぁあ!!!かきょうじょいやぁぁぁぁああ!!!」 「ゆっくちできにゃいぃいいぃい!!!きょきょはゆっくちできにゃいいぃいい!!」 「もうやじゃぁぁぁぁぁああ!!!ぉうちきゃえるぅううぅうう!!!」 「ゆぴぃいぃいいぃいい!!!ゆっくぃいぃい!!!!」 子供たちは、加工所という言葉に反応したのか、 体中から、体液を分泌させて、ブルンブルンと体を震わせて、 喚きだした。 『そこのちび共が勝手に話した。』 人間は、4匹の汚い赤ゆっくりを指差した。 「どぼぢでぞんなごどいうのぉぉぉおっぉぉお!!!!」 「うまぐいぐまでだまっでるっでいうやぐぞぐだっだでじょぉぉぉぉお!!!」 れいむとまりさは、赤ゆっくりたちを睨み付けた。 横で、ずっと、話しているのに、全然気づかないなんて、 ある意味、素晴らしい。 「うるしゃいのじぇ!!!はやきゅあみゃあみゃしゃんをもっちぇこい!!」 「しょうだよ!!!れいみゅはおにゃかがすいちゃんだよ!!!」 「きゃわいいまりしゃにがみゃんしゃせるくしょおやはゆっくちちね!!!」 「げしゅなくじゅおやはれいみゅがちぇーしゃいしゅるよ!!!!」 親と子が、罵り合いを始めた。 人間は、何事もなかったかのように、携帯電話を取り出し、加工所の番号をかけようとした。 「にんげんしゃん・・・」 飾りのない赤れいむが人間に話しかける。 「みんにゃをかっちぇね・・・・」 赤れいむは、涙を溜め、ウルウルとしている。 『おい、あのクズどもを助けるつもりはない。』 冷たく言い放つ人間。 「にんげんしゃん!!!れいみゅのかじょくをたしゅけちぇね!!!ゆっくちたしゅけちぇね!!!」 大きな声を上げて、叫ぶれいむ。 『家族か・・・お前、まだあいつらを家族だと思うのか?』 溜息をつきながら、人間は問う。 「しょうだよ!!!れいみゅのかじょくなんだよ!!!ゆっくちりきゃいしちぇね!!!」 赤れいむは人間を睨み付けた。 『そうか・・・じゃあ・・・どうしても、あいつらと一緒に暮らしたいか?』 人間はれいむに再び、問う。 「しょうだよ!!!れいみゅのかじょくとゆっくちくりゃしちゃいよ!!!」 れいむが満面の笑みで答えた。 今まで苛められてきただろう家族との絆というのは、簡単に切れると思っていたが、 ゆっくりにとって、餡子の絆というのは、情よりも深いモノだと、人間は悟った。 『そうか、じゃあ、この家から出て行け。』 人間は冷たく言い放った。 「どぼぢでじょんな」 『うるさいクソ饅頭』 飾りのない赤れいむを人間は野良ゆっくりたちの方へ蹴った。 「ゆびぃ!!!」 地面に叩きつけられて、餡子を吐き出す。 「おい!!!くそどれい!!!はやくまりささまをいえにいれるんだぜ!!!」 まりさが、頬をプクーと膨らましていた。 横で餡子を吐き、苦しんでいる赤れいむのことなど、一切気にしていなかった。 「ゆっくりさせろ!!!れいむをはやくゆっくりさせろ!!!」 目が血走っているれいむ。もうその表情はゆっくりとはかけ離れた形相になっていた。 「ちねっぇえええ!!!ゆっくちでしゃせにゃいくしょどりぇいはちねぇぇえ!!!」 「しぇーしゃいしゅるよ!!!れいみゅはちゅよいんだよ!!!」 「まりしゃがころちちぇやるんだじぇ!!!ちねぇええ!!!」 「ぷくー!!!れいみゅのうんうんしゃんでもたべりょ!!!」 子供たちもまた、親同様、威嚇していた。 「ゆっくりざぜないにんげんばじねぇぇぇっぇえ!!!!」 まりさが、ポヨンポヨンと体を弾ませて、人間に襲いかかっていった。 と、同時に、人間は、右手の人差し指と中指を突き出し、まりさの右目を突いた。 ザシュ!!! 「ゆびぃいいぃいい!!!いじゃいぃいいぃいいぃい!!!!」 まりさの悲鳴が響き渡る。 それを聞いて、顔面蒼白になるれいむと子供たち。 ブチン!!! そのまま、右目を抉り取る人間。 まりさは、人間に背を向けて、家族の方へ逃げようとする。 「いじゃいいいいぃいぃい!!!いじゃいいぃいいいよぉおぉおぉ!!!」 残された左目から、涙を滝のように流し、 抉られた右目辺りからは、餡子が漏れていた。 ずりずりと、体を引きずり、顔をクシャクシャにして、苦悶しているまりさ。 さきほどまでの強気な態度は一切見る影がなかった。 「ゆわわわわ・・・」 目の前にあるまりさの惨状を見て、目を点にして何か口走るれいむ。 ガチィ!!! 人間は、まりさの頭をつかみ、ねりわさびのチューブを取り出して、 抉り取った右目あたりに、わさびを念入りに塗りだした。 「ゆびびびびびびびびびびびびびっぃいいいいいぃいいいいいぃい!!!」 口をへの字に曲げ、痛がるまりさ。 さらに、人間は、ライターを取り出し、まりさの髪の毛に火をつけた。 「あじゅぃいいぃいぃいぃい!!!ばでぃざのがみがぁぁぁぁ!!!あじゅぃいいいぃいい!!!」 ひたすら叫び続けるまりさ。 炎に包まれても、なお、最期の瞬間まで、叫び続けていた。 残されていたれいむと子供たちは、呆然としていた。 目の前に起きたことを理解するのに時間がかかったのだ。 「ば、ば、ばばでぃ」 『うるさい』 れいむが泣き叫ぼうと思った矢先、人間が割って入った。 『お前らは助けてやる。そこのれいむに今までゆっくりしてもらった例だ。』 「うるざいぃいい!!!ばでぃざをごろじだにんげんばゆっぐり」 『それ以上言うと・・・お前もこうするから。』 人間は、炭と化したまりさの体を持ち上げて、その苦悶の表情を見せた。 それを見て、顔面蒼白のれいむ。 「にんげんしゃん・・・」 飾りのない赤れいむが、力なく、弱った声で、人間に話しかけた。 『れいむ。今までゆっくりさせてもらった最後のお礼だ。』 と、言うと、人間は・・・ 「ゆぶぅ!!!」 飾りのついた赤れいむを踏み潰した。 「おちびじゃんんんんんん!!!!!」 れいむの悲鳴が辺りを木霊した。 『これで苛められはしなくなるだろう。』 人間は、潰した赤れいむの飾りを、飾りのないれいむに着けた。 「ゆぅ!?くちゃいのじぇぇぇぇええ!!!」 「ゆっくちできにゃいいいい!!!ゆっくちでにゃいよぉ!!!」 「おりぼんしゃんきゃらくちゃいにおいがぁぁぁぁあ!!!」 ゆっくりの死臭が付いたリボンである。 ゆっくりたちが臭がって当然である。 『おい、くそ饅頭。』 と、人間はれいむに話しかけた。 「れいむはくそまん、ゆぶっ!」 パン!!! 人間はれいむに平手打ちをした。 れいむの頬は真っ赤に腫上がった。 人間は何度も何度も平手打ちを繰り返した。 数分後、顔が2倍くらいにパンパンに張ったれいむがいた。 『このれいむを苛めたら、次はもっと叩くからな。 絶対に苛めるなよ?』 人間は、れいむに問いかけた。 「ばばびばじだ・・・」 歯がボロボロになり、もはや見る影もないれいむであった。 『そして・・・ちびたち。お前らも苛めたらこうするからな。』 と、れいむの腫上がった顔を見せる人間。 「ゆ、ゆくちりきゃいしちゃのじぇぇぇぇええ!!!」 「もういじめまちぇんんんん!!!」 「ゆりゅちちぇぇぇぇぇええ!!!」 あまりの恐怖に、しーしーを漏らしながら、泣き喚く子供たち。 額をこすり付けて、擦り切れて、餡子が薄く見えるくらい、 腰(なのか?)を曲げ、土下座をし続ける。 「にんげんしゃん・・・」 死臭の付いた飾りのれいむは、人間を哀しそうな目で見つめた。 さっきまで、ゆんごくにいたのに・・・。 どうしてこんなことに・・・。 そんな風に思い出したれいむ。 『二度とオレの前に顔を出すな。次、見たら、こうするからな。』 クシャ!! まりさの炭となった死体を地面に叩きつける人間。 「ゆぶじびばいじばじばぁぁぁぁあ!!!」 腫上がっているため、どこに眼があるのかわからないれいむが、 涙を流しながら、謝ると、子供たちを連れて、どこかへ消えていった。 数日後・・・とある街角。 人通りの激しい大通りの道の傍らで、れいむとその子供たちは、 座り込んでいた。 れいむの顔の腫れは、まだ治ってなく、まともにしゃべることはできなかった。 子供たちも、ここ数日、何も食べていなかったため、 ゲッソリとやせ細っていた。 死臭のついたリボンのれいむも同じだった。 れいむは、思い出した。 人間から、歌が上手いと言われたことを。 「ゆゆゆ~ゆっくちちちぇいっちぇね~・・・」 か細い声で、歌い始めた。 すると、他の子供たちも・・・ 「ゆっくちちちぇるのじぇぇ~」 「ゆゆゆっくちにゃんだよぉぉお~」 「ゆゆゆん!!!ゆゆっくち!!!」 と、力ない声で歌いだした。 それを聞いたれいむもまた、 「ぶぶぶぼぬ~ぶぶぶりぶりりでべぇっぇええ!!!」 と、ブタの声の方が100億倍綺麗な声で歌い始めた。 彼らはゆっくりしたかった。 このゆっくりできない状況から抜け出したかった。 だから、ゆっくりできる歌を歌ってゆっくりしようと、 いつしか、それは大合唱になっていた。 だが、それは通りかかる人間からすれば、雑音、騒音の類。 みな、顔をしかめて、通り過ぎていく。 「ゆゆっくちち、ゆぶっ!!!」 赤まりさが通りかかった人間に踏み潰された。 「ゆんあやぁぁぁああ!!!れいみゅのいもうちょがぁぁぁああ!!!」 死臭が付いていないれいむは、泣き叫んだ。 次の瞬間、 「ゆぶぅ!!!」 赤れいむが、通りかかった人間に蹴られた。 「ゆぅ・・・おしょらを・・・ゆべぇぇ!!!」 宙を舞い、地面に叩き付けられるれいむ。 「ゆべぇ!!」 再び、他の人間に蹴られた。 「ゆびぃ!!」 「ゆぶぅ!!!」 「ゆげぇぇぇえ!!!」 いろんな人間に蹴られ続けて、いつの間にか、人ごみの中に消えていった。 残されたれいむと、子供たちは、歌うのをやめ、 死んだ魚のような、覇気のない目をして、その光景をずっと見ていた。 「きょんにゃゆっくちできにゃいゆっくちとはいっちょにいりゃれにゃいんだじぇ!!!」 赤まりさは、叫んだ。 「まりしゃはひちょりでゆっくちしゅるよ!!! ゆっくちしゃせないくしょおやとくしゃいれいみゅはゆっくちちね!!!」 赤まりさは、そう言った後、ピョンピョンと飛び跳ねて、その場から離れていった。 「ぱぴぺぽぉぉおぉ!!!ぱぴぺぽぉぉおぉ!!!ぱぴぺぽぉぉおぉ!!!」 顔の腫上がったれいむは、体をブルンブルンを揺さぶりながら、涙を流していた。 「おきゃあしゃん・・・」 赤れいむは母の名を呼んだ。 「ぱぴぺぽぉぉおぉ!!!ぱぴぺぽぉぉおぉ!!!ぱぴぺぽぉぉおぉ!!!」 れいむは、ただ、それしか言わなくなった。何を話しかけても、 体を揺らしながら、叫び続けるだけだった。 赤れいむもまた、その場を無言で離れていった。 「ぱぴぺぽぉぉおぉ!!!ぱぴぺぽぉぉおぉ!!!ぱぴぺぽぉぉおぉ!!!」 遠くから聞こえてくるのは、母親だったモノの音。 母親の声が聞こえなくなった辺りに、丁度、さきほど出て行った赤まりさがいた。 よく見ると、目がなくなっていた。 「くりゃいよぉおぉおぉ!!!どぼぢでよるしゃんにゃんだじぇぇぇぇえ!!!」 「にんげんしゃん!!!まりしゃのおめめしゃんをかえちちぇねぇぇぇえ!!!」 「ゆっくちしゃせにゃいにんげんしゃんはしぇーしゃいするのじぇぇぇええ!!!」 パッチリと目のあった部分には、空洞ができた赤まりさが、そこにはいた。 「ゆぅ!?くちゃいいぃいぃい!!しょこにいるのはくしゃいれいみゅなのじぇ!!!」 赤まりさは、赤れいむを呼んだ。 「れいみゅぅうぅう!!いままでいじめちぇことをあやみゃるきゃらおめめしゃんをさがしゅのじぇええ!!」 「きゃわいいまりしゃがゆっくちできにゃいのじぇぇええ!!!」 「はやきゅさがしゅのじぇえええ!!!じゃないとまちゃいじめりゅのじぇええ!!!」 大きな声で叫び続けるまりさ。 赤れいむは、赤まりさを何か汚いモノを見るかのような目で、見つめた後、 その場から無言で立ち去った。 赤れいむは、かつて、住んでいた人間の家に辿り着いた。 「にんげんしゃん・・・」 れいむは人間を呼んだ。 『お前か。』 人間はれいむの呼びかけに応じた。 「れいみゅ、まちがえちぇたよ・・・・にんげんしゃん・・・れいみゅをたしゅけちぇね・・・」 れいむは、どんなに嫌われていても家族との絆を選んだ。 本能なのか?宿命なのか?それとも情けなのか? それは人間には理解できない何かなのだろう。 その結果、とてもゆっくりした天国、ゆんごくだった生活と引き換えに、 とてもゆっくりできないつらさを味わった。 今、その過ちに気づき、再び、かつて暮らしていた人間の前に姿を現した。 ビュ!!! れいむの左目に、人間のデコピンが炸裂する。 れいむは耐え切れず、大きな声で叫んだ。 それから、人間は、わさびチューブを取り出し、れいむの左目に塗りだした。 激しい痛みがれいむを襲う。 その後・・・れいむは・・・真っ赤な炎に包まれて・・・ 死の間際、れいむは思った。 ここは、ゆっくりできない地獄、ゆんごく 終わり 飾りのないれいむが野良ゆっくりだったら・・・ ゆっくり道に出会わなければ・・・ ユグルイの平行世界 いともたやすく行われる えげつない行為 ってか、ユグルイ、かなり長くなる。 最低、30話くらいになりそう。 てか、いる?ユグルイ? 他の作品 ユグルイとか ユグルイあきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 「、」が多すぎ -- 2016-10-08 16 26 15 普通につまんなかった -- 2015-10-20 19 42 46 赤まりさが一番うざかった 親と一緒に精神崩壊して死ね -- 2014-01-04 00 05 39 やっぱ落とす話はいいねぇ -- 2012-02-22 18 09 05 あぁ、ゴミを拾っていくあたりこの人間もゴミなのかと思ったが、変わり者なだけで普通の人間だったね。 -- 2011-11-09 22 53 52 とてもすっきりー!な結末で大変ゆっくりできました!! ただお兄さんが両親ゆっくりを痛めつけ過ぎで 既に詰んでる状態の親子に飾り無しれいむを戻したのが少しアンフェアな感じがしました 普通の野良生活に戻し、そのうえで飼いゆ生活を捨てた事を後悔させた方が もっとゆっくりできたかも -- 2010-12-19 07 52 32 お兄さんにお礼が言えた辺り割と善良かなとも思ったが 結局、自分がゆっくりする事しか考えて無いただの馬鹿だったな>赤れいむ -- 2010-10-15 04 13 29 赤れいむ、せっかくの幸運を溝に捨てるとはなw 助けてくれた青年にあんな酷い事を言う饅頭どもを養えとか、恩を仇で返しすぎだろ… -- 2010-10-14 21 12 55 私ユグルイ大好きですよ -- 2010-09-13 14 41 49 つか赤まりさ死亡フラグ建てすぎだろww -- 2010-09-09 22 54 53 ゆんごく?煉獄のことかな?と思ったら天国で、天国かと思ったら地獄とか、、 まあ、饅頭はつぶれたら汚いだけですけどねww -- 2010-08-12 04 14 56 通常種の「不幸になる才能」は都城王土もびっくりな異常性 -- 2010-07-01 23 35 47 なるほど -- 2010-06-29 17 45 20 もちろんいります!! 是非書いてください ユグルイ -- 2010-05-20 15 47 37
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「ふたば系ゆっくりいじめ 804 祟り神・前篇/コメントログ」 なんか…モヤモヤするのぉ -- 2014-01-02 00 40 54 このドスはひじり種と一緒に保護活動する善良中の善良だったのね さて、救われるのはどのゆっくりかな? ※原作キャラを出したり、幻想郷を舞台にするのは御法度だけど、 境界を操るあのBBA···お姉さんなら許せる気がしてしまう。 -- 2018-01-09 14 54 59
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(男とれいむ) 村の外れのあばら家。そこに住む一人の男とゆっくり。 男に身寄りは無く、唯一家族と呼べそうなものは一緒に住むゆっくりれいむのみ。 暮らしは貧しくとも、一人と一匹仲良く暮らしていた。 男は田畑を持たぬ水呑み百姓。この村一番の豪農の下で働いている。 両親が死んで借金だけが残り、自暴自棄な生活をしていたところを拾ってもらった。 それからしばらくして、偶然家の前で動けなくなっていたゆっくりを助け、それ以来一緒に住んでいる。 「ただいま。今帰ったぞれいむ。ひとりで寂しかっただろう。」 「ゆ!おかえりなさい!ゆっくりいいこにしてたよ!」 「今日は疲れた。だが仕事がひと段落ついた。明日は休みだ。朝から一緒に遊んでやるぞ。」 「ゆ!ほんと?」 「ああ、もちろん!」 「ありがとうおにいさん!じゃあきょうはゆっくりやすんでね!」 男はれいむを実の子の様に可愛がり、れいむも男によくなついた。 人づきあいが苦手な男であったが、れいむにだけは気を許し、家には常に笑いが絶えなかった。 ただれいむだけは、昼間男がいない間、森の方を眺めては溜息を吐いていた。 もちろんその理由に男が気づく訳がない。これが偽りの幸せである事を知っているのはれいむだけ。 (突然の来訪者) 翌日。男はれいむと一緒に村の外へ遊びに出かける事にした。 れいむを腕に抱き家の外に出る。するとそこに待っていたのはれいむより一回り大きいゆっくりまりさ。 まりさに気がつくと急にれいむの顔色が変わる。しかし腕に抱いている為男は気付かない。 すっかり青ざめているれいむを無視して、まりさは男に話しかけた。 「ゆっくりしていってね!!!」 「やあ。ゆっくりしていってね。どうしたんだこんな朝早くに?」 「まりさたちはれいむのおともだちなの!ゆっくりあそびにきたよ!」 「おお、そうだったのか。俺のいない間に友達を作ってたんだな。 じゃあ邪魔しちゃ悪いな。俺は家でゆっくりしてるから、れいむは友達と遊びにいったらいい。」 「ゆ・・・おにいさん・・・」 「ゆ!ありがとう!さあれいむ!いっしょにゆっくりしにいくよ!」 一瞬、男に助けを求めるかの様な表情を見せたれいむ。そんなれいむをまりさ達は強引に連れていく。 その様子を特に不審に思わず見送った男は、「計画が狂ってしまったな。さてこれからどうしようか。」 などと考えながら家に入った。一方まりさ達は人気の無い森にれいむを引っ張っていく。 「ゆ。ここらへんでいいか。ここならだれにもきかれないぜ!」 「ひさしぶりだぜれいむ。あのにんげんとはうまくやってるのか?」 「・・・・・・」 「だまってちゃわかんないんだぜ!こどもがどうなってもいいのか?」 「ゆ・・・おにいさんは・・・れいむにとってもやさしくしてくれるよ・・・」 「それはよかったぜ!じゃあいつでもさくせんかいしできるな!」 「『おやぶん』からのでんごんだ!『ひつようなものはそろった。かぎがてにはいりしだい、さくせんかいし!』 これだけじかんをやったんだ。かぎのありかはしらべてあるんだろうな!」 「ゆ・・・でも・・・」 「でも?なにいってるんだぜ。おまえじぶんのこどもがどうなってもいいのか?」 「ゆ・・・わかったよ・・・だいじょうぶ・・・かぎがしまってあるところはわかってるよ・・・」 「わかればいいんだぜ!おまえがしっかりやれば『おやぶん』もこどもをかえしてくれるぜ!」 「・・・・・・」 親分とは村の近くの森をシマとする巨大まりさだ。二年ほど前にこの地にやって来た。 体がでかくて喧嘩慣れした手下共を連れ、あっという間に元々この森のリーダーであったゆっくりを追い出した。 今ではこのあたりのゆっくりは、親分にみかじめ料を払わなければゆっくりする事もできない。 逆らったら人間に売られてしまう。まりさ達は人間に飼われたゆっくりを通じて人間と交渉する事までしていた。 自分達に逆らうものやシマの外に遠征に出かけて捕らえたもの、それを人間に売るのだ。 もちろんゆっくりを高値で買う者などほとんどいない。 まりさ達は村の周囲のゆっくりをしっかりと押さえて、ゆっくりが村の田を襲わぬ様目を光らせていた。 人間はその事への対価としてゆっくりを買い取っていた。 その親分が次のシノギとして選んだのが、村の豪農の蔵に盗みに入る事だった。 自分の商売相手の物、しかも人間の物を盗むなど正気の沙汰では無いが、実は理由があった。 人間の側からオファーがあったのだ。盗みの手順。揃えるべきもの。蔵の鍵を持つ人物。 すべてを教え、その上報酬まで払うと言う。親分はその話に乗った。 今年出産したばかりのれいむの赤ゆっくりを人質にとり、計画を手伝わせる。 れいむが蔵の鍵を持つ男に取り入り、鍵をしまっておく場所を調べる。 その間、食い物で懐柔した身体つきのれみりゃに鍵の開け方を覚えさせる。 そして蔵の中の米を運ぶのに適した、帽子を持つまりさ種を大勢あつめる。 れいむの元に来たのは準備が整った事を知らせる親分の手下。鍵の在り処の確認の為やって来た。 鍵の位置も分かった。いよいよ今夜から作戦決行だ。 まりさ達とれいむは何も知らぬ男の元へ帰る。 「おお、おかえり。早かったね。もっとゆっくりしてきたら良かったのに。」 「ゆ・・・」 「ゆ!もうじゅうぶんゆっくりしたよ!またこんどゆっくりあそびにくるよ!」 「ゆ!またねれいむ!おにいさんも!またあそびにくるよ!」 「じゃあな。昼間は俺がいなくてれいむも寂しいだろうから、時々遊びに来てやってくれ。」 「うん!さようなら!」 (その日の夜) 男の夜は早い。明日も朝早くから仕事があるし、なにより貧乏暮らしには明りに費やす余裕が無い。 その日も日が落ちて暗くなった頃には床につき、しばらくすると鼾をかき始めた。 男が完全に寝入ったのを確認したれいむは鍵を持って家を出る。待っていたのは昼間来たまりさ達。 「ちゃんともってきたか?」 「ゆぅ・・・もってきたよ・・・」 「そうそう。それでいいんだぜ。こどものことがかわいけりゃ、まりさたちのいうことをちゃんときくんだぜ!」 「ゆぅ・・・」 「さあ!かぎはてにはいった!それじゃやろうども!いくぜ!!!」 「「「「ゆーーーーーーーーーーー!!!」」」」 まりさ達は早速仕事にかかった。れみりゃが鍵を開け、駆り集めたまりさ達が米を運ぶ。 親分の手下達は見張り役。荷物が重いと泣き言を言うゆっくりに制裁を加えて働かせる。 ある程度運びだしたら再び鍵を閉め、鍵をれいむに返して元の場所に戻し、森へ帰っていった。 こんな事がしばらく続いたある日、事件は起こった。 (発覚) 「ぐはっ!」 「てめえもしぶとい野郎だな。いいかげん白状したらどうだ?」 「だから!俺じゃありませんって!何で俺が蔵の米を盗まなくちゃならないんですか!」 「惚けるのもいいかげんにしろ!お前以外にこんな事する奴はいねーんだよ! 俺たちゃ大旦那の下で働きだしてもう十年以上経つ。お前以外全員だ。 今までこんな事は無かったんだ。一年前、お前がここで働き始める前まではな!」 「大体俺は元からお前の事が気に入らなかったんだよ。 お前の親父は真面目ないい奴だった。それが原因で騙されて借金背負ったがな。 そんな奴だから俺達は金を出し合って高利貸しからの借金を肩代わりしてやった。」 「あいつは感謝してた。必ず返すって言ってたぜ。嘘は吐かない奴だったしな。だから利子もあまり付けなかった。 それなのに息子のお前ときたら。親父とお袋が死んで、その後なにやってた! 碌に働きもしねえで、ゆっくりを捕まえては殺して遊んでるだけだったじゃねえか!」 「別に金の事を言ってるんじゃねえ。俺たちゃお前のその態度が気に入らなかったんだよ! 確かに大変な額の借金だが、すぐに返せとは言わねえ。真面目に働いて少しづつ返してくれ。 葬式の日にそう言ったはずだ。それなのに・・・お前は!」 「そんなお前を可哀そうに思ったお嬢さんが、大旦那を説得してくれて、 それでここで働くようになったんじゃないか。それなのに・・・ お嬢さんや大旦那の信頼を裏切るなんて、お前にゃ人の心がねえのか!」 「待ってください!だから、蔵の米を盗んだのは俺じゃな・・・ぐえ!」 「いいかげんにしろ!じゃあお前以外にいったい誰が米を盗めるって言うんだ!鍵が壊された跡はねえ。 蔵の鍵を持ってるのは大旦那と若旦那、それに倉庫番のお前しかいないんだよ!てめえがやったんだ!」 「ぐはっ・・・」 「さあ吐け!盗んだ米をどこへやった!もう売ったのか?じゃあ売った代金はどこにある!」 「信じて・・・信じて下さい・・・俺じゃ・・・俺じゃない・・・」 「まだ言うか!!!」 「もうその辺にしないか。」 「あ!若旦那・・・しかし・・・」 「こいつを倉庫番に指名したのは私だ。私にも責任はある。ここは私に預けてくれないか?」 「若旦那がそうおっしゃるのなら・・・」 若旦那に諭され男達は仕事に戻る。 「大丈夫かい?」 「すみません若旦那。信じて下さい・・・俺じゃない・・・俺じゃないんです。 世話になっている若旦那や大旦那、それにお嬢さんを裏切るなんて・・・ そんな事できるはずありません。誓って・・・誓って俺じゃない・・・俺じゃないんです・・・」 「わかっているよ。私はこの一年お前がどれだけ真面目に働いてきたか、ちゃんと知っている。 お前は心を入れ替えた。こんな事できる人間じゃない。皆よく調べもせず勝手な事を・・・」 「じゃあ・・・」 「だがそれでは皆が納得しないんだ。親父は小作の中の誰かがやったと思ってる。 皆はお前が犯人だと思ってる。私一人が信じていても無理だ。いずれお前は犯人にされてしまうだろう。」 「・・・・・・」 「村を出るんだ。心配ない。当分の生活に必要な金は渡す。今夜の内に村から逃げるんだ。 皆には『あいつにはきっちりおとしまえをつけて、村から追い出した』と言っておく。 親父も説得してお前に追手がかからないようにしてやる。 すまないな・・・私にできる事はこれくらいだ・・・無力な私を許しておくれ。」 「とんでもありません。ありがとうございます若旦那。本当に・・・」 「さあ、この金を持って行くんだ。なるべく遠くへ逃げるんだぞ。」 この若旦那がこんなに優しいのには裏がある。若旦那は蔵の米を横流ししていたのだ。 女遊びと博打に金をつぎ込み、借金で首が回らなくなった若旦那は家の米に手をつけた。 元から倉庫番の男にすべてを押し付け村から逃がし、米が無くなった事をうやむやにする計画だった。 この男を倉庫番に指名したのも若旦那。家族も無く、他に頼る身寄りも無い。 犯人に仕立て上げ村から追い出すのに何の障害も無い。 さらに保険も掛けていた。まりさを唆し米を盗ませたのも若旦那の仕業。 万が一、皆が男の無実を信じ真犯人を探し始めたら、すべての罪をまりさに被せるつもりだった。 饅頭共は私の名前を出すかもしれないが、どこの世界に人間より饅頭の言う事を信じる奴がいるだろうか。 もしいたとしても問題ない。簡単に言いくるめられる。若旦那は自分の計画に絶対の自信を持っていた。 結局保険を使う必要もなく、すべては計画通りにいった。 若旦那はこみ上げる笑いを必死で堪えながら男を見送った。 (狂気) 男は家に戻った。そのあまりに早い帰宅にれいむは驚き、困った様な表情を見せる。 「ゆ!おにいさんどうしたの!こんなにはやくかえってくるなんて!」 「ああ。ちょっとな。それよりれいむ。これから引っ越しの準備をするぞ。 この村を出て行かなくてはいけなくなったんだ。」 「ゆ・・・」 「おーい!れいむ!むかえにきたぜ!よかったな!これでこどもとくらせるぜ!」 「迎えにきた?どういう事だ?まりさ。」 「ゆ!おにいさん!どうしてこんなじかんにいえにいるの!」 「どうしてって・・・仕事でちょっと問題があってな・・・ それより迎えにきた、子供と暮らせるってのはなんだ?」 「ゆ・・・それは・・・」 「ゆ!じつはこのまえれいむとあそんだときにあかちゃんができたんだよ! それであかちゃんがぶじうまれたから、いっしょにもりでくらすためにむかえにきたんだよ!ほんとだよ!」 「ふーん。そうだったのか。そりゃ丁度よかったかもしれんな。」 「ゆ?」 「俺は今夜この村を出るんだ。仕事場で問題が起きてな。そのせい出て行かなくてはならなくなった。 れいむも連れていこうと思っていたが、やはり住み慣れた土地で暮らした方がいいだろうな。 れいむの事頼んだぞ。幸せにしてやってくれ。」 「ゆ!まかせてよ!それよりおにいさんのほうこそたいへんだね! どろぼうがはいったせいでむらをでないといけないなんて。」 「ちょっとまて・・・」 「ゆ?」 「なぜ蔵に泥棒が入った事を知っている?俺は『仕事場で問題が起きた』としか言ってないぞ。」 「!!!!!」 「まさか・・・お前達が・・・」 「ゆ!しらないよ!まりさたちはおこめなんてぬすんでないよ!」 「なぜ盗まれた物が米だと知っている!!!!!」 「!!!!!」 「貴様ら・・・」 まりさ達は一斉に逃げだす。しかし所詮はゆっくり。すぐに男に捕まってしまう。 捕まったまりさは観念したのか、それとも自分だけ助かろうとしたのか、すべてを話し始めた。 親分の命令で蔵の米を盗んだ事。 れいむに演技をさせ、男と一緒に暮らすように仕向け、鍵を盗ませた事。 男はすべてを聞くと呆然として固まってしまった。その隙にまりさは逃げ出す。 れいむも一旦は逃げようとしたが、男が心配になったのかその場に留まった。やがて・・・ 「あはっ!あははっ!あははははははははははははははははははは!」 「ゆ!おにいさんどうしたの!だいじょうぶ?」 「あはははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははは ははははははははははははははははははははは」 「ゆーーーーー!しっかりして!」 「ははっ!お前、俺を騙してたんだな!ずっと!そして何も知らない俺の事を笑っていたわけだ!」 「ち、ちがうよ!わらってないよ!しかたなかった・・・しかたなかったんだよ・・・」 「あはは!まさか、まさか身内に騙されるとは!家族同然に思っていたお前に!」 「お嬢さんに救われ、彼女の言う通りにした結果がこれだよ!あははははははは!」 「両親が死んで、借金だけが残った。その借金だって騙されて負わされたものだ。しかも仲間に! あいつは皆の手前、本当の事を言う訳にもいかず、自分が音頭を取って皆で親父を助けたかの様に言ってたが。 そんなのウソっぱちだ!あの野郎、俺が何も知らないと思ってやがる。 高利貸しとグルになって騙したのはあの野郎なのに!」 「おにいさん・・・」 「まあ聞けよ。両親が死んで、俺は生きる気を無くしてた。やり場のない怒りをお前らゆっくりにぶつけてた。 ゆっくりの悲鳴を聞いている間だけすべてを忘れる事ができた。ゆっくりを殺している間だけ・・・ だがな・・・満たされないんだよ、そんな事しても。常に渇いていた。常に餓えていた。 まるで底無しの胃袋を持ち、無限の食欲を持つ怪物の様に。永遠に満たされない。永久に続く地獄。」 「いつしか皆も俺のことを、狂人でも見るかの様な目で見るようになった。 そんな化け物に対して唯一、人間として接してくれたのが彼女だった。 彼女だけが俺を救ってくれた。彼女だけが俺の渇きを満たしてくれた。 彼女の傍にいたい。人間らしく生きたい。そう言った俺に向かって彼女はこう言った。」 「『恨みは何もうみださない。過去を引きずり、いつまでも恨みを持つのではなく、もっと未来を見るの。』 『情けは人のためならず。皆を助けられる人になるの。そしたら皆もあなたを助けてくれるはず。』 彼女に言われ俺は心を入れ替えた。誰かを恨んだり、人生を悲観したりせず、真面目に働いた。 お前を助けたのも彼女の言葉があったからだ。ははっ!しかし、まさか演技だったとはなぁ!」 「はははっ!駄目だ!もう駄目だ!もう何も信じられない!何も信じない! だってそうだろ?彼女の言葉を信じた結果がこの仕打ちだ! 家族と思っていたゆっくりに裏切られ、泥棒のゆっくりにハメられて罪を被り、もうこの村にはいられない。」 「あははは!もう人間には戻れない!人間らしくは暮らせない! じゃあ何になる?鬼か?妖怪か?もののけか?なんでもかまわん! どうせ俺は地獄行きだ。だがな、ただじゃ死なん。お前ら全員道連れだ!」 「お前らを殺す。全員殺す。生まれ変わってもまた殺す。転生してもまた殺す。 二度とゆっくりなどさせるものか!もしこの体が滅んでも、必ず蘇って殺しに戻って来る。 永久に殺し続けてやる!永遠に死に続けろ!」 「まず最初はお前からだ!だがその前に仲間の居場所を吐いてもらう。 ああ、別に素直に話してくれなくてもいいぞ。お前の事だ。どうせ嘘を吐くんだろ? かまわないよ?体に直接聞く。正直に話させる方法はいくらでも知ってる。」 (死) 「おやぶん!どうするんだぜ?あのにんげんはふくしゅうするために、ここにやってくるかもしれないぜ!」 「ゆ・・・にんげんあいてじゃかちめはねぇ。ここは『さんじゅうろっけいにげるにしかず』だ!にげるぜ!」 「にげるためにはじかんをかせぐひつようがある。ここいらのへいたいどもをのこらずあつめろ! やつらをぶつけてまりさたちがにげるじかんをかせぐ。」 「ゆゆこもよんでこい!せっかくえさをやってかいならしたのに、もったいないきもするが・・・ せにはらはかえられん。あいつのきょたいならじかんをたくさんかせげるはずだ。」 「わかったぜ!おやぶん!」 「あはははははは!みーーーーーつけたっ!」 「ゆっ!」 「ははっ!探したよぉ。随分探したよぉ。れいむがこの場所を教えてくれなくってさあ!」 お前達に何か恩義でもあるのかねぇ。」 「ゆ・・・れいむのこどもをあずかってる。きっとこどもをたすけるためだぜ。」 「へえ、子供がいるんだぁ。じゃあお母さんに逢わせてあげないとねぇ。 ほらっ!お母さんだよーーーー♪」 「ゆーーーーーーーーー!!!!!!」 男はれいむから剥ぎ取った皮を被り「あははははははは」と壊れた玩具の様に笑う。 「お、おにいさん・・・おちついて、おちついてはなしをきいてほしいんだぜ。」 「ん~~~~?なあに?」 「まりさたちも、まりさたちもだまされていたんだぜ。こんなことになるなんてしらなかった。」 「あははっ!それで?」 「にんげんがこのけいかくをもちかけてきたんだぜ。きしょうしゅのゆっくりをさがすのを、てつだうかわりに こめをすこしわけてやるって。じぶんがもっていくわけにはいかないから、おまえたちでぬすみだせって。 ばれないようにこちらでうまくやってやるから、なにもしんぱいいらないって。」 「そうか・・・お前達も騙されて・・・本当なら蔵の米が減ってるのに誰も気が付かず、 お前達は米を手に入れ、この計画の立案者とやらは希少種のゆっくりを手に入れ、 俺は泥棒扱いされる事もなかったはず・・・こう言いたいんだな?」 「ゆ!そうだぜ!わかってくれた?」 「あはははは!!!んなわけねーだろーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!! お前らのことだ、どうせ嘘吐いてるんだろ。」 「ほ、ほんとなんだぜ!しんじてほしいんだぜ!」 「つーか、嘘とか本当とか、そんな事もうかんけーねーし!お前ら全員殺すって決めたし! 判決!死刑!即時執行だよっ♪」 「まってほしいんだぜ!さいごに・・・さいごにみせたいものがあるんだぜ!」 「見せたいもの?なんだ?」 「みせたいものは・・・」 「見せたいものは?」 「おやぶーん!みんなつれてきたぜ!」 「みせたいものってのはこれさあ!おまえら!よくやったぜ!」 男の周りをゆっくり達が囲む。100匹以上もいるだろうか。遠くからも声がする。まだ集まって来る様だ。 中には身体つきの捕食種や、男の背丈ほどの大きさのゆっくりもいる。 「さあみんな!だいじょうぶ!これだけいたらにんげんにもかてるぜ! にんげんをたおしたやつは『じきさん』のこぶんにしてやるぜ! しっかりはたらけ!てがらをたてろ!にんげんをたおしたやつは、だれよりもゆっくりさせてやるぜ!」 「「「「「「「「「「ゆーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」」」」」」」」」」 ゆっくり達が一斉に男に襲いかかる。それを見た男は手に持っていた鉈を鞘から抜く。 急にゆっくり達の足が止まる。手に持った鉈から発する狂気を感じ取ったのか。 この鉈は以前、男がゆっくりを殺す為に使っていたものだ。殺した数は千を下らない。 この鉈にこびり付いた餡子は、ゆっくりだけが感じ取ることのできる死臭を放つ。 「ゆっくりの死」そのものを体現したかの様なその鉈に、ゆっくり達は恐怖し動くことができない。 「お前達にも解るか。数え切れぬほどのゆっくりの餡子を吸ってきたこの鉈だ。 何か怨念の様なものが映っているのかもな。まさかまた使う事になるとは思ってもいなかったが・・・」 「さあ、死の螺旋の始まりだ。これからお前達を殺す。殺し続ける。 駆除しても駆除しても増え続けるお前達の事だ。絶滅する事は無い。どこかでまた生まれ変わるだろう。 だが、生まれ変わってもまた殺す。運良く逃げ延びても、探し出して必ず殺す。」 一閃。男が振った鉈が一番近くにいたゆっくりの頭を切り落とす。 「ゆーーーーーーーーー!!!!!」 「ごめんなさい!ごめんなさい!」 「たすけてよ!まだしにたくないよ!」 「どうじでこんなごどずるのおおおお!ゆっくりしたいだけなのにいいいいいい!」 「ゆっくりしたい?すればいいさ。俺に殺された後に。いくらでも。 生まれ変わってゆっくりしていろ。すぐに殺しに行く。俺に殺されるのをゆっくり待ってろ!」 ゆっくりの群れは大混乱に陥った。泣き声。叫び声。ゆっくりの悲鳴が辺りを包む。 家族を見捨てて逃げ出すもの、親を殺され仇を討つため男に向っていくもの。 恐怖のあまり気が狂って仲間を攻撃し始めるものまでいた。まさに阿鼻叫喚の地獄絵図。 「ゆーーー!!!よくもおかあさんを!!!」 「いやーーー!まりさーーー!たすけてーーーー!!!」 「ゆふふ、ゆふふ・・・」 「このこだけは!このこだけは!」 「ああ・・・まだしにたくないよ・・・」 「ゆーー!まりさはころさないでね!ころすならほかのだれかにしてね!」 「こぼねーーーー!」 「ゆっくりしていってね!!!ゆっくりしていってね!!!ゆっくりゆっくりゆっくゆっくゆっゆっゆ・・・」 「おかあさーん!どこにいるのおおおお!!」 「ゆふふ・・・みんな・・・みんなしんじゃうんだ・・・」 「ゆうう・・・れいむ・・・いまいくよ・・・まっててね・・・いっしょにゆっくりしようね・・・」 「もっとゆっくりしたかったーーーーーーーー!!!!」 一方、親分まりさは森の小道を村へ向かって逃げていた。自分の手下だけを連れて。 「ゆっゆっゆっ!にげるぜ!にげるぜ!だいじょうぶ!にげきれるぜ!」 「ゆっゆっゆっ!しかしおやぶん、うまくにげだせましたね。まったくおやぶんのうそはおそろしい。」 「このかずならかてるだの、『じきさん』にしてやるだの。あいつらすっかりそのきになってたぜ!」 「ゆっふっふ!おかげでじかんかせぎはせいこうだ!」 「で、このあとどうするんだぜ?」 「まず、むらのちかくまでにげる。そしたらおまえたちは『おおだんな』のところへいけ。たすけをもとめるんだ。 まりさはからだがおおきくてめだつから、むらのちかくにかくれてる。」 「『おおだんな』とは、『わかだんなのあくじをしらべてほうこくする』というけいやくをしてるんだ。 そのみかえりとして、なんでもべんぎをはかってくれることになってる。」 「『わかだんな』のあくじをしらべることはできなかったが・・・だいじょうぶ、しんぱいいらない。 まりさたちがやったぬすみを、『わかだんな』がやったことにすればいいぜ。」 「これでけいやくはたっせいしたことになる。『おおだんな』はまりさのたのみをきいてくれるはずだぜ。 まりさたちをとおくににがすことくらいはしてくれるはずだ。」 「おまえたちわかってるな!うまくだますんだぜ!ぬかるんじゃないぜ!」 「おいっ!へんじくらいしたらどうなん・・・だ・・・」 「返事?返事が欲しいのか?じゃあ急がないとな。今から追いかければ、まだ間に合うんじゃないか?」 「ゆ・・・」 「心配すんな。すぐに追いつくさ。あの世で手下共に宜しく言っといてくれ。」 「じゃあな。また会う日まで。また殺す日まで。さようなら。」 「ゆーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」 end 作者名 ツェ 今まで書いたもの 「ゆっくりTVショッピング」 「消えたゆっくり」 「飛蝗」 「街」 「童謡」 「ある研究者の日記」 「短編集」 「嘘」 「こんな台詞を聞くと・・・」 「七匹のゆっくり」 「はじめてのひとりぐらし」 このSSに感想を付ける